Nicola Benedetti
美しいヴァイオリンのメロディが印象的に使われた映画音楽を中心に
2009年の2度目の来日以来、次の日本での公演が待望されているニコラ・ベネデッティが、2013年2月の香港公演の後に急遽日本に立ち寄り、プロモーションの他、CLIC Sargent(小児癌撲滅を目指す英国の慈善団体)の賛同者として続けている学校訪問の一環としてブリティッシュ・スクールへのアウトリーチを行った。彼女はこれまでにもユニセフや、スコットランドのエル・システマなどに参加。その功績から、2013年には大英帝国勲章第五位にも選ばれている。
「私はこれはチャリティではなく、音楽家としてやるべき仕事のひとつと考えています。自分のコミュニティや国の人たちの人間的な生活の質を上げるために働くのは当たり前のことです」
2005年に結ばれたDeccaとの契約は2年追加され、さらにこの先6年延長される予定のようだ。今回リリースされた『シルヴァー・ヴァイオリン』は、同レーベルからの通算7枚目となるアルバム。
「このレコーディングでは、コルンゴルトの波瀾万丈な人生とその作品の両方がインスピレイションの源となっています。彼は、クラシックのコンサートやオペラなどの舞台作品以外に、映画音楽でも成功し、さらにその双方を巧みに融合させて、彼独自の音楽というものを生み出しました。なので、両ジャンルを横断した組み合わせにしなければバランスを欠いてしまうと考えたわけです。また、他の映画の曲もすべてヴァイオリン・ソロがオリジナルとして使われているもので、ヴァイオリンの音色が映画における人の感情や状況をしっかりと表現している曲を選んでいます」
このアルバムでは、1年前から愛用している1717年製のストラド“ガリエル”(彼女の直前はおそらくハイメ・ラレードが所有)の音色も聴くことができる。
「ガリエルは弾いてみて1週間で自分と相性がピッタリだと感じました。仲間からは、今の楽器の方が温かさや深み、甘さのある音だと言われています」
共演者には若手の名手が集う。
「殆ど皆20年も一緒に演奏しているよく知った友人ばかりです。ピアノ・トリオも組んでいますし、シトコヴェツキーやエルシェンブロイヒはメニューヒン・スクールでも一緒でした。シドロヴァは友達が紹介してくれたの。彼女は素晴らしいわ!」
最後に、ではいつか是非彼らとあなたの初の室内楽アルバムでもと伝えたところ……
「実は次がそうなの。ショスタコーヴィチとチャイコフスキーのロシア作品集のつもりよ」
できれば来日公演でも聴きたいんだけど、と言い添えたのはいうまでもない。
Decca/©Simon Fowler