インタビュー

村松の全曲解説で辿る〈抵抗〉のドキュメント



1. Song for an Assassin


脈動するビートと陰影あるシンセに胸がざわめくSE。「これは“Assassin”のイントロを広げたものなんですけど、〈ブッブッ、ブッブッ〉っていうクリック音はその段階で足して、逆に“Assassin”にもモチーフとして入れて、というアプローチも」。



2. Assassin


クリーン・トーンのギターのアルペジオを軸とする、憂いを帯びたミニマル・チューン。「制作期間の最後、俺が急性胃腸炎でスタジオに行けなかった間に出来てた曲で、ちょっと湿った暗さがある。アレンジの経緯を訊かないでメロを付けたんで、たぶんメンバーが想像してたのとは違うものが付いてるはず。詞は、メンバーそれぞれが隠し通しているものを何とか引き出したい、そういう気持ちで書いてます」。



3. You're in Motion


パワフルなメロディーと共に4人が渾然一体となってドライヴする、従来のNothing'sらしいナンバー。「歌詞の意味も含めてまさに〈ドライヴ感〉みたいな。とりあえず自分を転がせ、自分でなんとかしろっていう歌ですね」。



4. 村雨の中で


サビに向けて加速する日本語詞曲。随所で響くメロトロン(恐らく)の音が切なさを増長する。「Nothing'sの持つエモさを表現するコード進行ですね。歌詞は、パッてはめたときにメンバーからの反応がいちばん良かった。それぞれとリンクするところがあったんじゃないかなって気がしますね。みんな、何かを乗り越えようとしてました」。



5. Out of Control


アニメ「PSYCHO-PASS」のオープニングに起用された先行シングル。音数も展開も凄まじいダンス・チューン。「この曲が出来たのはデカかった。バンドのアンサンブルを意識した『Silver Sun』の反動で、自分たちのエレクトロニック・ミュージック方面のニュアンスを1回振り切って出せたんで、その後のいい布石になったんじゃないかと」。



6. Sick


〈目には目を〉的な歪み合戦を仕掛けるギター&ベースもすごいが、メタル・パーカッションのようなスネアの音もすごい、アシッドなインダストリアル・チューン。「これ、頭の音とかヤバくないですか? ベース・シンセみたいなエフェクターを使ってて、エグいファズがかかってる。ギターもすごい歪み方をしてて、あとドラムも(スネアにメタル素材を)貼ってて……全体的にドロドロした、気持ち悪い方面の音が出てますよね(笑)。コードもマイナーなのにメジャーに行くみたいなことをしてるし」。



7. 朱い群青


映像喚起力の高い日本語詞が沁みる、ノスタルジックなミディアム。「このなかで弾き語りをやってる部分のツーコードから広がった曲。この歌に関して大事なのは、〈迷いを照らす〉っていう部分。悩んで、迷わないと見つからないものもあると思うので。あと俺、コード進行がノスタルジックなM83とかアルバム・リーフが好きで、その要素は反映されてる気がします。アルバム・リーフは曲から景色が見えるところも好きなんで、この曲に望むのはそういう部分ですね」。



8. Bog


底辺で走るシンセと金属質のギター・リフ、加工コーラスがマシーナリーな印象を与える無機質ナンバー。「この曲は、まずシンセの音があって、そこに対してアプローチするっていうバンドとしては初めての試みで。メロも、メロディーラインの一部を切り取ってそこだけ嵌めてあるみたいなものなんで、ちょっと頭の中を彷徨ってるみたいな感覚のある曲だと思います」。



9. Predestined Lovers


どっしりしたビートと左右に振れるギターで不敵さを出しつつも、サビで劇的に昂揚するエモーショナル・チューン。「この曲、サビを引き立たせようとアレンジが二転三転してるんです。ケミカル・ブラザーズみたいな感じにしようって言ってたところから、細かく変えていって。Aメロも平熱感のあるところからサビに向かってますね。そこのイメージはナイン・インチ・ネイルズ」。



10. きらめきの花


軽やかなギター・リフと4つ打ちに彩られた、バウンシーなダンス・ロック曲。「これはもうギター・リフありきでしたね。ダンス・ミュージック的な要素というか、そのリフがループのように鳴り続けて展開していくみたいな。歌詞は生形が書いてるんですけど、Nothing'sのキラキラな部分が凝縮されてる。今作の中では救いにあたる曲」。



11. The Fool


挑発的なポリリズムと太いサビのメロディーとの対比に揺さぶられるエンディング。「俺ね、自分がいることでNothing'sに青い部分をプラスしたいんです。これはそのつもりで書いた歌で。普通だったら使わない言葉遣いとか、その言葉に対して酔っていく部分とかに青さがある。俺がロックに対して持ってるテーマも、やっぱり青さ──青春とかなんで、そういうところをいつでも引き出していきたい。自分がこのバンドで受け持ってる役割も、そういう感情の部分なんだと思ってます」。



カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2013年07月22日 19:30

更新: 2013年07月22日 19:30

ソース: bounce 356号(2013年6月25日発行)

構成/土田真弓

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