インタビュー

SWEETBOX 『#Z21』



クラシック音楽をあしらったキャッチーなダンス・トラックを世界に轟かせてきたプロジェクトが、6代目のヴォーカリストに選んだのは……福原美穂!!



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97年に発表した“Everything's Gonna Be Alright”の世界的なヒットで知られるスウィートボックス。そのエグゼクティヴ・プロデューサーを務めるハイコ・シュミットは、福原美穂がレオナ・ルイスと声を重ねた“Save Me”を聴いて一目惚れし、福原をユニットの6代目ヴォーカリストに抜擢した。先日、実家に帰って荷物を整理していたところ、18歳のときに書いた〈未来設計ノート〉が見つかったという彼女。そこにはこんな言葉が綴ってあったそうだ。

「〈25歳で世界進出〉って書いてあって。そんなノートを書いたことすら忘れていたんだけど、〈あ、ちゃんと夢が叶ってる〉ってびっくりしました」。

スウィートボックスの新作『#Z21』は、同時にグループに迎えられたラッパーのロジック・プライスと共に、今年1月、LAで10日間かけて録音。早口で歌う英語の発音には悪戦苦闘したそうだが、そこは負けず嫌いで直感型の音楽動物である彼女。果たしてアルバムでは、パワフルで伸びやかな持ち前の美声が躍動している。

クラシック音楽の有名フレーズを引用するスウィートボックス特有のスタイルは本作でも健在だ。映画「2001年宇宙の旅」で知られる〈ツァラトゥストラはかく語りき〉の旋律で幕を開ける“#Z21(Zeitgeist 21)”は、超ポップなエレクトロ・ナンバー。ここまで明るい打ち込みのダンス・チューンは福原にとって初めてのものだし、「近くで見ると結構キワどい」という大胆な衣装を着た近未来感溢れるMVも新味で必見だ。

「〈ZEITGEIST〉はドイツ語で〈いまいちばんホットなもの〉という意味で、〈21〉は、アメリカでは21歳が大事な年齢とされてるそうなんです。あと、ハイコは〈いろんなシチュエーションで聴ける曲を一枚にまとめたい〉と言っていて。例えば“Carol Of The Bells”で聖歌隊が歌ってるメロディーはアメリカでクリスマスに必ず聴く曲だったり、“Aasse's Death”でサンプリングしている〈オーゼの死〉はキリスト教の葬儀でよく使われたりする。だから、タイトルにはその年代ごとでホットなもの、大事なものという意味が込められているんです」。

マーヴィン・ゲイ&タミー・テレル“Ain't No Mountain High Enou-gh”の一節を福原が力強く歌う“Nothing Can Keep Me From You(Ain't No Mountain)”は晴れやかなエレクトロ・ハウス。同じくハウス調の“Beautiful”はいままでにない柔らかで艶っぽいハイトーン・ヴォイスが聴ける逸曲だ。「違和感の塊みたいな曲(笑)」という“Aasse's Death”は、オペラとクラシックとテクノが合体し、そこに福原が朗読する宮沢賢治の詩が乗るというユニークさ。

「ちょっとレゲエ調の“Life Is good”は新鮮だったし、“Alone(Sometimes I)”は曲自体にポテンシャルを感じて、個人的にいちばん好き。あと、“Justified”は〈これ、絶対やりたい〉ってハイコに直訴して歌った曲なんです」。

現在は本作のワールドワイドなリリース・プランが進行中。夢はその後のワールド・ツアーへと膨らむ。

「今回は一曲一曲にすごくキャラクターがあって、それに合わせて自分を変えていくのがおもしろかった。福原美穂に1回蓋をして振り切る、そんな度胸というか、〈行っちゃえー!〉みたいな感じは養われたと思う。ロジックとは〈早くライヴをやりたいね〉ってやり取りしてるし、今後のスウィートボックスの活動がとても楽しみ。私の声が世界に届けばいいなと心から思ってます」。



▼関連盤を紹介。
左から、スウィートボックスのベスト盤『Complete Best』(avex casa)、同2009年作『Next Generation』(Atlantic)

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2013年07月22日 19:50

更新: 2013年07月22日 19:50

ソース: bounce 356号(2013年6月25日発行)

インタヴュー・文/猪又 孝

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