インタビュー

渡辺貞夫

©Taikan Usui

80歳、3度目のブラジル。
気負いなく、慈愛に満ち、躍動する新作!

この2月で、80歳になった。でも、見た目は若々しいし、なにより意気軒昂。そんな彼の新作『オウトラ・ヴェス〜ふたたび〜』は昨年暮れに、お眼鏡にかなったブラジル人たちと録音したもの。それは最初のブラジル録音(『ブラジルの渡辺貞夫』)から45年、前回のブラジル録音盤(『Elis』『Made in Coração』)からも25年たつ、サンパウロでのレコーディング作だ。

「そろそろブラジルには行きたいなと思っていたんです。それで、せっかく行くんだったらレコードも作りたいと。来年がワールドカップじゃないですか。だから、来年になるとブラジルはレコーディングどころじゃなくなってしまう(笑)。いろいろ曲もあったので、今やってしまおうと思いました」

新作で求めたものは、ブラジリアン・フレイヴァーに溢れたジャズ。レコーディングは固定された5人のミュージシャンでなされている。

「ギタリスト以外は皆かつて日本に呼んだこともある人たちですね。そのときすごく良かったので、一緒にレコーディングしようと思いました。ブラジリアン的なムードを持ちつつ、ちゃんとジャジーなアプローチをしたいと、皆にははっきり伝えましたね。彼ら、ジャズと言う言葉を聞いたら、なんか気張っちゃったみたいなんだけど(笑)」

また、スピリチュアルな歌い手として評価の高い、やはり旧知のファビアーナ・コッツァが2曲でリード・ヴォーカルを取っている。

「彼女のブラジルの北東部っぽいアーシーさが好きなんです。事前に全部の曲の譜面を送っておいて、歌いたいものを2曲選んでもらいましたが、彼女が選んだのは共にバラード。ラテン的な、ブラジリアンが気に入りそうなメロディの曲を選んだのだと思います」

披露しているのは、すべて渡辺貞夫のオリジナル。メロディ性と潤いに富む新旧の楽曲がそこには10 曲収められた。

「自分で言っちゃうのもなんだけど(笑)、曲はいいものがそろったと思いますし、自分でも楽しんで書けているという思いがありますね。《レクイエム・フォー・ラヴ》は3月11日の災害への追悼の意を込めた曲で前作でもやっていますが、僕のなかではまだ終わっていなくて、もう一回ブラジルの人たちとこの曲をやってみたかったんです」

すうっと広がる闊達な躍動、そして慈しみの情。その中央には雄弁なアルト・サックスのブロウ……。実はCDの曲順は、スタジオで録音された順序に準じているという。そういう自然体のあり方も、優しくもおおらかな聞き味に繋がっているのではないだろうか。

LIVE  INFORMATION
『渡辺貞夫 オウトラ・ヴェス ~ふたたび~』

7/3(水)~7/4(木)ビルボードライブ大阪 
7/6(土)名古屋ブルーノート 
7/8(月)和光大学ポプリホール鶴川 
7/9(火)~7/10(水)ブルーノート東京

カテゴリ : インタヴュー

掲載: 2013年07月05日 16:05

ソース: interview&text:佐藤英輔