高橋幸宏 『LIFE ANEW』
[ interview ]
昨年〈還暦イヤー〉を迎え、これまでのキャリアを振り返る3時間超のライヴも行った高橋幸宏が、新たにYukihiro Takahashi with In Phaseなるバンドを組んで4年ぶりの新作『LIFE ANEW』を発表した。その〈In Phase〉のメンバーは、ジェイムズ・イハ(ギター)、Curly Giraffeこと高桑圭(ベース)、堀江博久(キーボード)、権藤知彦(管楽器)の4人。pupaで活動を共にする2人(堀江、権藤)がいるものの、pupaとは趣を異にしたタイトなバンド・サウンドが響き渡っている。高橋のルーツのひとつ、60年代アメリカン・ロックを探訪する新たな旅となった新作について、高橋と高桑の2人に話を訊いた。
合言葉は〈いなたカッコイイ〉
――まず、新バンドのIn Phaseを結成した経緯について教えてください。
高橋「去年、12月のライヴの前あたりから新作のことを考え出したんですけど、今度はバンドっぽくやりたいなって思ったんです。というのも、それまでの作品はエレクトロニカ、フォークトロニカ的なアプローチをやってきて、そこにギターとかベースとかを巧いミュージシャンにお願いしてダビングしてもらっていたんですけど、そういうやり方じゃなくて、しっかり〈抱える〉やり方がいいなと」
――同じメンバーでいっしょに作り上げる?
高橋「そう、バンドっぽくね。それで、じゃあどんな音楽をやろうかと考えたんです。皆さんのなかでは〈高橋幸宏=イギリス〉みたいなイメージがあるみたいですけど、それは(サディスティック・)ミカ・バンド以降の話で。プロになりたての10代の頃は、アメリカの音楽の影響も大きかったよな、と思って。でも、これまでそこを振り返ってこなかった。で、そのへんに詳しい世代はどのあたりだろうと思って調べると、(高桑)圭君たちくらいだったんです。たまたま去年、Curly Giraffeの新作が出て、それを聴いてたんですよね。ジェイムズ(・イハ)は僕のトリビュート・アルバム(『RED DIAMOND ~Tribute to Yukihiro Takahashi』)に参加してくれたんですけど、彼の新作も去年出て。それを聴くと圭君と共通するものを感じたので、2人を橋渡ししたいなと思ったんですよ。でも、すでに2人は知り合いだった(笑)。それが2人に声をかけたきっかけかな。合言葉は〈いなたい〉というか、〈いなたカッコイイ〉」
高桑「いやあ、びっくりしましたよ。Curly Giraffeの新作を出した時に幸宏さんからコメントを頂いて。そこで〈何かいっしょにできたらいいね〉って書いてくれたんです。それを有言実行してくれたのがすごいなと思って。口約束が多い業界だから(笑)」
高橋「声とかメロディーの作り方が合うかもしれないと思ったんです。ジェイムズもそうだけど」
高桑「声はホント似てますよね。3人でハーモニーを入れると、誰がどこを歌っているのかわからないくらい。後から聴くと〈自分の声に聴こえるけど、これ幸宏さんだよな?〉とか」
高橋「〈自分が歌ってるのは(ハーモニーの)上だっけ? 下だっけ?……〉ってわからなくなる時があるよね」
高桑「そうそう、だからCSN(クロスビー、スティルス&ナッシュ)じゃないけど、今回はバンドのハーモニーがいいなと思って」
――今回のサウンドのポイントとして、〈ハーモニー〉があったんですね。
高橋「ありましたね。もうひとつはね、ちょっと屈折しているんですけど、60年代から70年代頭に一発屋で終わったようなバンドのサウンドをめざしてみようかと(笑)」
高桑「ちょうどアルバムを作りはじめた頃、幸宏さんのラジオ番組が始まったんですよね。その選曲をしなくちゃいけないというのもあって、〈こんな曲ありましたね〉とか、みんなでアイデアを出し合っていたんです。それが今回のレコーディングのヒントになっているというか」
高橋「メロディーは覚えているけど曲名が出てこない、みたいな曲を出し合ってね(笑)。いま僕がやっているラジオではそういう傾向の曲をかけることが多いんです」
高桑「何でしたっけ? 堀江君が〈メロディーはわかるんだけど曲名が出てこない〉って言ってたの」
高橋「ああ、ニッティ・グリッティ・ダート・バンドの“Mr.Bojangles”ね。それより前だと、僕は10代半ばまではFENとかで聴いてたりしたんだけど、堀江君や高桑君は後追いで聴いていて。後追いの人のほうが研究してるから、逆に詳しかったりするんだよね」
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