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インタビュー

Negicco 『Melody Palette』



10年かけて磨かれた結晶から放たれる、煌めきのニュー・ステレオフォニック・サウンド・スペクタク〜ル! またはメロディーに溢れた13色のパレット——そんなに音楽が好きなら、じゃあNegiccoにしてね



Negicco_A
すごく嬉しい内容のアルバムです(Kaede)、セットリストを決めるのも楽しくなりますね(Nao☆)、新たな得意分野を発見できました(Megu)



6月某日。アメリカ在住の日本人高校生、加藤豪将が、メジャー・リーグ・ベースボールのドラフト会議で名門・ニューヨーク・ヤンキースから指名された。日本の野球ファンのなかで、彼の名前を知っている人がどれだけいただろうか。指名から1週間後にはチームの遠征先に招待され、イチロー選手との2ショットがスポーツ誌にも掲載されるなど、一躍その名が知れ渡ることに——というのは本題とはまったく関係ないニュースだが、Negiccoのオリジナル・ファースト・アルバム『Melody Palette』を聴き、彼女たちの話を訊き、記事の書き出しを考えていたら……こうなった。



ファンたちの愛に包まれて

結成から丸10年。新潟を拠点に活動を続けてきた3人組。その高い音楽性を買われて2011年6月にT-Palette入りし、着実に支持を広げてきたNegiccoだが、まだまだ世間一般的な意味での認知度を十分に獲得しているとはいえない。しかし、彼女たちのパフォーマンス・スキルやポテンシャルは、名門ヤンキース……ではなく、名だたるクリエイターたちを惹きつけてきた。何より、今年に入ってからリリースされたシングル“愛のタワー・オブ・ラヴ”“アイドルばかり聴かないで”において彼女たちと2ショットをキメているのは、日本のポップ・シーンに高いアヴェレージで良曲を産み落としてきた2人——西寺郷太と小西康陽であるし、今回の『Melody Palette』に至っては、作家陣にユメトコスメの長谷泰宏、tofubeats、サイプレス上野とロベルト吉野、吉田哲人(アレンジのみ)、RAM RIDERがズラリと並び、リミキサーにはgrooveman Spotやbanvoxといった注目のクリエイターも名を連ねている(さらにアートワークはTomato n' Pineの仕掛人として知られたJane Suが担当)。そんな彼らは〈お仕事〉としての関わり以上に、まず、Negiccoの〈ファン〉だ。

Nao☆「それはアルバムを聴いて本当に思います。すごく感動しました。私はアニソンが好きなので、長谷さんと吉田さんにプロデュースしていただくって話を聞いたときからドキドキしていて。緊張してピリピリとした現場になるかもって思ったんですけど、すごく温かい雰囲気で録れましたね」

Kaede「去年の〈YATSUI FESTIVAL!〉でRAM RIDERさんを初めて観て、そこからたくさん楽曲を聴いて、何回かライヴもごいっしょさせていただいたんですけど、曲を作っていただけるとは思っていなかったのですごく嬉しくって」

Megu「サ上とロ吉さんの曲でラップに挑戦させていただいたんですけど、がんばってる感じが初々しくてイイかな?って思ってます(笑)。あと、tofubeatsさんの“水星”が大好きなので、どんな曲を作っていただけるのか楽しみだったんですけど、すごく素晴らしい曲を書いていただきました」

そしてNegiccoのファンというポジションから彼女たちの世界観を作り続けてきたconnieの新曲群ももちろん冴えている。特に“ルートセヴンの記憶”は、初期ユーミンを彷彿とさせるサウンド風景で、ミディアム・スロウな曲調も相まって、Negiccoをひとつ大人にするような楽曲に。

Nao☆「いくつになっても歌える曲だってconnieさんが言ってて、出だしから惹きつけられる、めっちゃ好きな曲です。いままでこういう感じ、夕暮れが似合うような曲調のものがなかったので、ライヴのセットリストを決めるのも楽しくなりますね」

また、“ネガティヴ・ガールズ”では、3人では初となる作詞に挑戦!

Nao☆「アイデアの元になっているのは、SCANDALさんの“恋の始まりはダイエット”(HARUNA+RINAのアーモンドクラッシュ名義)という曲で、セリフの掛け合いがおもしろいので、メンバーにも聴かせて、こういう感じで私たちってこういうコなんだなってわかってもらえるような詞を書きたいねって。セリフにすると、その人の素が出るじゃないですか。そうやって書いたものを最終的にconnieさんに整えてもらいました」



新しいNegiccoへ

そんな体験も含め、とにかくあらゆる色が並べられた『Melody Palette』。“アイドルばかり聴かないで”の一節に〈アイドルばかり聴かないで/だんだんバカになるんだよ/アイドルばかり聴かないで/身体に悪いことだらけ〉とあるが、Negiccoの音楽に関して言えば、バカになるどころか、聴き手の音楽的感性、感覚を豊かにしてくれるものだ。

Megu「いろんな作家さんが関わることによって、自分たちもこういうことができるんだって、Negiccoの新たな得意分野を発見できました」

Nao☆「あと、自分の声の特徴も新たに引き出してもらったなあって。そういう意味では自分で聴いていても楽しい」

Kaede「“イミシン☆かもだけど”の出だしとか、ぽんちゃ(Megu)の声がめちゃめちゃイイなって思った」

Megu「あ〜、自信なかったから嬉しい!(ちなみに彼女が歌い出しのパートを歌うことも稀である)」

Kaede「作曲の長谷さんから、〈こういう感じで歌ってください〉っていうお手紙をいただいてたんですけど、参考として挙げられていたのが、小泉今日子さんの“100%男女交際”とか広末涼子さんの曲だったんですね。ぽんちゃはそのへんをちゃんと掴めてたのかなあ……私は自分で全然ダメだなって思ったんだけど(笑)」

Nao☆「ぽんちゃが〈Nao☆ちゃんっぽい曲〉って言ってくれたのがすごく嬉しくて。私の声って、滑舌という点ではあまりクリアじゃないんですけど、ほんわかしてるから好きとかって言ってもらえることもあるんですね。いままで自分の悪いとこばかり気にしがちでしたけど、制作を通じて、作家さんにも〈あなたのここがすごくイイんだよ〉っていうことを言ってもらえたりして、それが自分の個性であり、良さなんだなって前向きになれました。これだけいろんな方に関わっていただいたので、それでいてマイナス思考だと申し訳ないですもんね」


カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2013年08月22日 15:30

更新: 2013年08月22日 15:30

ソース: bounce 357号(2013年7月25日発行)

インタヴュー・文/久保田泰平