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インタビュー

LONG REVIEW――VARIOUS ARTISTS 『hide TRIBUTE VI -Female SPIRITS-』



キャッチーなメロディーが浮き彫りに



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2013年はhideのソロ・デビュー20周年にあたる年。本作はこれを記念するトリビュート・シリーズ6作品のうちの一枚であり、女性シンガーにフォーカスしたカヴァー集だ。

冒頭を飾るのは双子モデル、AMIAYAによる“ROCKET DIVE”。煌びやかなドラムン仕様のトラックに脱力気味の歌声を浮かべたダンス・ポップに仕立てており、原曲のキャッチーな味わいを増幅させている。続くモデル出身のシンガー=miniの“In Motion”もドラムンベースを敷いたダンス・チューンで、EDMの流儀に即したビッグなエレクトロニック・サウンドに昂揚させられる。

R&B系シンガーを多く取り揃えているのも本作の特色だろう。青山テルマは“TELL ME”をアコギ1本のみを従えた正攻法のバラードに料理。詩音の“HURRY GO ROUND”は、軽やかなビートが心地良いサニーなムードのナンバーで、原曲同様に3拍子へとチェンジする後半の展開が楽しい。

アルバム中でもっとも毛色の異なるサウンドを聴かせてくれるのが、分島花音による“Beauty & Stupid”。原曲の60sなテイストを活かし、レトロな風合いのジャズ歌謡へとトレースしている。大胆なアレンジだが、オリジナル曲に思えるほど彼女独自の世界観に引き寄せているのがお見事。突出したカヴァーのセンスを感じさせる逸曲だ。

轟音ギターを鳴らすchay“FLAME”のようなカヴァーも収められてはいるものの、大半の楽曲はオリジナルのバンド・アンサンブルから大きく飛躍したサウンドへと変換されている。だが、いずれも違和感なくポップな仕上がりを見せており、これはつまるところ、hideのオリジナル自体がすこぶるポップだから……ということなのだろう。オルタナ~ラウド系のサウンドを纏いつつ、軸を成しているのは親しみやすくキャッチーなメロディー――そんなhideの音楽性を本作は浮き彫りにしている。




掲載: 2013年12月11日 18:01

更新: 2013年12月11日 18:01

文/澤田大輔