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インタビュー

Norma Winstone

カテゴリ : インタヴュー

掲載: 2014年03月04日 10:00

ソース: intoxicate vol.108(2014年2月20日発行号)

interview&text:上村敏晃



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©Glauco Comoretto / ECM Records



心を解き放ち、静寂の向こうへ誘う歌声

 英国のトップ女性シンガー、ノーマ・ウィンストンの新作が発表された。彼女のトリオによる演奏で、参加メンバーは、ピアノのグラウコ・ヴェニエルとクラリネット&サックスのクラウス・ゲジングである。

「12、3年前に二人と共演して、そこに特別なものが生まれる、というポテンシャルを感じました。その後、私たちは3枚のアルバムを録音しましたが、その時間の経過の中で、“自由さ”を持てるようにもなりました」

優れた画家の絵画には“光”だけでなく、“影”が密やかに息づいている。本作には、音として鳴っていない部分、その豊饒な“沈黙”が静かに呼吸している。それは、この音楽の奥行きであり、おそらく、3人はその“沈黙”のイメージを共有している。

「私もそう思います。そして、良い音楽には何かミステリー(謎)が含まれているのではないでしょうか」

ノーマは器楽曲に自らの鮮やかな詩想から生まれた歌詞を添えて歌うことがある。本作ではラルフ・タウナーのリリカルな旋律に歌詞が添えられている。

「曲を聴いた時、自分がどういう感情を掻き立てられるか、そこに(歌詞を書きたいと思えるかの)起点がありますね。そういう情動が湧き起こってこないと、歌詞を書くのは難しいです。歌詞を書くというのは、曲に歌詞を付け加えるのではなく、曲の中に歌詞を自分で見出していくということです。特に、曲に響いているハーモニーは、私にとって重要です。その曲の伝えるべきものが何なのか、何度も何度も聴いてみます。そうしているうちに詩のフレーズが浮かんできます」

清冽な楽器の音と、ノーマの静かな語り口の、豊かな情感が満ちた歌声が響き合って生まれる独創的な音世界が魅惑的な表題曲をはじめ、本作収録のオリジナル曲は秀逸な出来だ。そして、3人が構築してきた世界観で演奏されるカバー曲にも注目したい。たとえば、トム・ウェイツの《サンディエゴ・セレナーデ》。 映画『トッツィー』のテーマ曲《君に想いを》。映画『真夜中のカーボーイ』の主題歌《うわさの男》。さらに、ノーマは、映画『トーク・トゥ・ハー』でカエターノ・ヴェローゾが唄った《ククルクク・パロマ》もカバーしている。この曲はメキシコの民族舞踏曲の名曲だが、彼女は自らが創出した英語詞を添えて歌っている。

「カエターノが唄うヴァージョンを聴いて、一目ぼれしてしまいました。私は、彼の歌のムードを伝えることが出来る詩、それを念頭に英語詞を創りました」

本作には、ノーマの“詩情”が揺らぎ、曲によっては、3人の瞬間の閃きによるインプロヴィゼーションのスリリングな交歓も用意され、この音楽の余韻の深い味わいは、このトリオにしか生み出せないものだ。


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