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第113回 ─ colla disc 10周年!! @ 渋谷O-Nest 2009年12月7日(月)

第113回 ─ colla disc 10周年!! @ 渋谷O-Nest 2009年12月7日(月)(4)

連載
ライヴ&イベントレポ 
公開
2009/12/24   18:00
更新
2009/12/24   18:46
テキスト
文/土田 真弓

■チーナ

  4番手はピアノ/ヴォーカルの椎名杏子を中心とした5人組、チーナ。ステージ真ん中にヴァイオリン、向かって右にコントラバス、左にピアノ、背後にギター&ドラムスという編成は、彼女たちがどんなバンドかを知っていてもやはり目を引く。

  「チーナです。よろしくお願いします。まずはコンピに入っている“トントンねぇねぇ”からやります」。

 椎名がそう告げると、間髪入れずにドラムのリムショットが。そこに軽やかなピアノのリフが加わり……いよいよ全員が一斉に音を発した瞬間の爆発的な昂揚感といったら! 目の前がパッと開けるような感覚に心が浮き立つ。ヴァイオリンの華やかな旋律に耳を奪われたかと思えば、弓弾きのコントラによる滑らかなソロが前に出て、そして上空へ駆け上がっていくような歌のメロディーが解き放たれ――と、楽器が楽器だけに派手なアクションはないが、主役が次々と入れ替わっていく曲構成が観ていて楽しい。

  この日のセットリストは、ファースト・ミニ・アルバム『Shupoon!!』のなかでもアップテンポの楽曲を中心に、未発表曲も2曲披露。先に演奏されたタイトル不明の曲は、4つのリフ+ドラムがリズミックに絡み合う構成に自然と身体が動く。サビと間奏を経た後半では同じ展開が登場するが、サンバ調に移行したドラムと各パートのリフの微妙な変化によって祝祭感がグッと増し、そのグルーヴが伝播するように、楽しげにステップを踏む観客の輪が広がっていた。そこに続いたのは“サーカスの少女”。ギターの西依翔太が鉄琴とパーカッション、ヴァイオリンの柴由桂子がマラカスを担当したりとさまざまな音が細かく挿入され、かつ激しいテンポ・チェンジが繰り返される楽曲だが、そのエキセントリックな展開のなかから筆者が感じたのは主人公=サーカス団の一員である少女の孤独感。歌詞が聴き取れなかったので言葉抜きでの印象だが、冒頭とラストでコントラバスが奏でる憂いに満ちたフレーズが物語の方向を示しているような気がした。

  椎名のMCは、ほぼ告知と照れ笑いのみといったシンプルこのうえない内容。そのシャイぶりと、正直すぎる歌の世界観との対比がおもしろい。

 そんなステージの最後を飾ったのは、言葉の破壊力では前述の初作のなかでも群を抜いている“蛾と蝶とたこ焼きとたこ”と“マトリョーシカ”。個人的にはその言葉が観客にどう届くのかに興味があったのだが、フロアでは、軽やかな曲調に身体を揺らしつつも、ところどころで引っかかりのある言葉が発せられるとじっと耳をそばたてる……といった現象が起きていた。音自体はクラシック・ポップ。しかし、彼女たちがパフォーマンス後によく言われるという「ロックだね」という評は、まさにこういった点によるものだろう。