BILL WITHERS『Just As I Am』 Sussex/ソニー(1971)
30代前半という遅咲きのデビューを飾ったビルの初アルバム。ブッカーT・ジョーンズのプロデュースで、アル・ジャクソンやスティーヴン・スティルスらをバックに従えた楽曲群は、“Harlem”を筆頭に、大ヒットした“Ain't No Sunshine”、後にブラックストリートがネタ使いする“Grandma's Hands”など、フォーキーでありながら骨太にグルーヴする傑作揃い。ビルの朴訥とした歌声も聴き手の心を静かに揺さぶる。*林
BILL WITHERS『Still Bill』 Sussex/ソニー(1972)
ジェイムス・ギャドソンらワッツ103番街リズム・バンドの面々とのセッションで生まれた2作目。多忙なブッカーTにプロデュースを断られたことで、却って現場の緊張感やノリが有機的に封じ込められている。グリッティーな“Use Me”をはじめとする引き締まったファンク群を核に、炭坑の労働歌や賛美歌に根差したような“Lean On Me”など、男臭い哀愁と希望が入り交じった不思議な聴後感が残る。歴史に残る文句ナシの名盤。*出嶌
BILL WITHERS『Live At Carnegie Hall』 Sussex/Columbia(1973)
72年10月にNYのカーネギー・ホールで行われたライヴの実況盤だ。ジャイムズ・ギャドソンら2作目の録音メンバーがステージに並んで名人技を披露する贅沢なショウで、1~2作目からのナンバーを中心に、ここでしか聴けない自作曲も披露。歌や演奏はスタジオ録音作並みに精度が高いが、ユーモラスなMCやアドリブを交えて歌うライヴならではの展開は、ビルの素顔をよりあきらかにしてくれる。*林
BILL WITHERS『+'Justments』 Sussex/Reel Music/Solid(1974)
サセックスでの最終作。本作のバックも『Still Bill』のメンツが中心だが、ハープの音を加えるなどしたサウンドは以前より滑らかで、ビルの歌も優しげ。特にクェストラヴ編纂のコンピにも収録された“Can We Pretend”は当時の夫人の作で、ホセ・フェリシアーノのギターに酔わされるビル屈指の美曲だ。近年UKのアシュレー・トーマスがカヴァーした“The Same Love That Made Me Laugh”もカッコいい。*林
BILL WITHERS『Menagerie』 Columbia(1977)
スキップ・スカボローと共作した“Lovely Day”を幕開けに、ブラジリアン色も盛り込んだ温かいメロウ・グルーヴが滑らかに溢れ出す名作。ケニ・バークと共同制作した“She Wants To(Get Down)”など、本人が恥じているというディスコ路線の曲も都会的で格好良い。レイ・パーカーJrらLAの敏腕による演奏もタイトだ。全体的に流麗なストリングス・アレンジが効いていて、ビルらしいフォーキーなラヴソングもよりアダルトに響く。*出嶌
BOOKER T.『Evergreen』 Epic/ソニー(1974)
TVCMに使われた“Jamaica Song”人気もあって、このタイミングで世界初CD化となったソロ作。言うまでもなく元MG'sのオルガン奏者だが、LAの陽光に射たれてレイドバックしたような作風は往時のルーズな黒さとは真逆のフォーキーなものに。プリシラ夫人とのデュオ作で開花したシンガー・ソングライター感覚をさらに醸成し、奥ゆかしい歌い口でシンガーとしても魅力を発揮。以前の姿を思わせるオルガン主導のインストもある。*出嶌
EUGENE McDANIELS『Outlaw』 Atlantic/ヴィヴィド(1970)
ロバータ・フラック“Feel Like Makin' Love”の作者でもあるシンガー・ソングライターの、アトランティックでの初作。〈放浪者〉というキャラを演じて当時の米国社会を鋭く斬ったメッセージ性の強い作品で、ジャズ、ソウル、ブルースをない交ぜにしたサウンドをバックに、静かに、力強く己の主張を歌い上げる。〈フォーキー・ソウル〉と言うよりモロにフォークな曲もあるが、佇まいはビル・ウィザーズと同じだろう。*林