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福田一雄氏「バレエ音楽の歴史とバレエ・リュス」講演会レポート(6月22日)

福田一雄氏

6月22日(日)国立新美術館3階講堂にて指揮者の福田一雄氏(写真)による講演会が行われました。福田氏は1931年東京生まれ。ピアノをポール・ヴィノグラドフ氏(元モスクワ音楽院教授)に師事。1957年読売ホールにおいて「バレエ音楽の夕べ」を企画し、日本フィルを指揮してデビュー。現在はシアターオーケストラトーキョー音楽監督、新国立劇場バレエ研修所講師。バレエ音楽の研究をライフワークとし、多くのバレエ団との指揮活動の他、バレエ音楽の歴史、および複雑多岐にわたる楽譜の整理と蒐集を行いバレエ界に多大な貢献をしています。

《アルミードの館》1909年5月初演
講演は、バレエ・リュス立ち上げ時の作品であるニコライ・チェレプニン(1873~1945)作曲《アルミードの館》を、1968年に福田氏ご自身の指揮で日本初演された話に始まりました。バレエ関係者の間で《パキータ》のバリエーションとして知られる曲は、実はこの《アルミードの館》バリエーションであることが指摘され、先日、木田真理子さんが最優秀女性ダンサー賞を受賞して話題となった「ブノア賞」が、《アルミードの館》で装置・衣装・台本を担当したアレクサンドル・ブノワ(1870~1960)に由来することなどが語られました。ご紹介するCDはジーヴァ指揮モスクワ交響楽団の演奏。現在入手できる唯一の録音です。

《レ・シルフィード》1909年6月初演
現行版で「前奏曲イ長調」(太田胃酸のCMで有名)で始まる《レ・シルフィード》ですが、もともとは「軍隊ポロネーズ」で華麗に始まる予定でした。ところがバレエ・リュス初演の前日にブノワが「こんな厳めしい曲は開幕にふさわしくない」と言い始め、変更するにも楽譜が間に合わず、楽曲中に入っていた「前奏曲イ長調」が急きょ1曲目となったエピソードが紹介されました。これはバレエ・リュス関係者から福田氏が直接聞いた話だそうです。ご紹介するDVDは、1924年よりバレエ・リュスに所属したアリシア・マルコヴァによる1953年の映像。CDはバレエ指揮のスペシャリスト、アーヴィング指揮による全曲盤です。

《春の祭典》1913年5月初演
1910年の《火の鳥》は、元々リャードフ(1855~1914)に作曲が依頼されていました。しかしリャードフがなかなか曲を作らないので、ディアギレフは若きストラヴィンスキー(1882~1971)に作曲を依頼しました。ストラヴィンスキーはウクライナ民謡などの要素を入れながら作品を完成。初演は大成功し、1911年の《ペトルーシュカ》への作曲依頼につながりました。この曲でもロシア民謡などの要素が取り入れられました。そして初めてストラヴィンスキー自身が台本を書き、変拍子や不協和音を多用する斬新な作曲技法を発揮したのが第3作の《春の祭典》でした。福田氏は、この作品にストラヴィンスキーの真の個性が認められると語られました。ご紹介するDVDは、初演時の振付や衣装を再現したマリインスキー劇場の映像作品。CDは初演100年を記念して制作された、《春の祭典》38種類の演奏を収めた20枚組BOXです。

《パラード》1917年5月初演
奇人として有名だったサティ(1866~1925)が作曲した風変わりなバレエ音楽。通常のオーケストラには入らない楽器や日用品が登場。タロール(軍楽隊の打楽器)、サイレン、宝くじ抽選機、ガラガラ、タイプライター、ピストル、水たまりの音など。福田氏がその音が出るタイミングを指揮のゼスチャーで指摘しました。ご紹介するCDは2枚。1枚目は、16歳のときにディアギレフと出会い、その才能を愛され、同性愛の対象にもなった、後の大指揮者マルケヴィチ(1912~1983)による1954年録音。2枚目は大作曲家ラヴェルの最後の弟子で、バレエ・リュスと同時代のパリを生きたフランスの名指揮者ロザンタール(1904~2003)による1959年録音です。
また同日19時からは偶然の一致で、バイエルン・シュターツバレエによるバレエ・リュスの復活上演《牝鹿》《牧神の午後》《シェヘラザード》のストリーミング放送があり、バレエ・リュス三昧のような一日となりました。(タワーレコード)

カテゴリ : Classical

掲載: 2014年06月18日 19:30