インタビュー

INTERVIEW(3)――アナログ・テープレコーダーにドラムを通したら……



アナログ・テープレコーダーにドラムを通したら……



0.8秒と衝撃。



――では、今回いちばん遊んだな、と思う曲ってあります?

塔山「やり方としておもしろいなと思ったのは、さっき言ったサンプラーでギターを演奏した“シエロ・ドライブ・10050”ですよね。それって、生のアンプのギターでは出せないって部分があって。サンプルのリフを重視したら、歌のトーン的になかなかメロが合わなかったんですね。俺らは男女でやってるから特にキーとか重要で。だから、最初はサビのほうにリフのキーを合わせにいってたんですけど、その幅を広げていくと、ギターのラウドな持ち味がなくなっていくんです。で、それを何回か試してたら、結局〈もうええわ!〉ってなってきて。リフは格好良いからこのままいこうと。転調しまくってるけど、一回もう、普通に録ってみようと思って。それで録ってみたら、エンジニアと2人で〈ええなあ、全然違和感ないわ〉ってなって。そういう転調感はいままで俺たちやってないんで、そういう意味でいちばん遊べたかなって自分では思いましたね。この曲の中心はまずサンプル。そこにどういうふうにサビとかを合わせていって曲として成立させるかっていう実験でしたね」

――しかも、キックは連打と休符の連続で変則的ですし。

塔山「ああ、その曲のときはエイフェックス・ツインを聴きまくってて、俺の“Come To Daddy”にしたろうと思いましたから。〈エイフェックス・ツインmeetsヴェルヴェッツの“Sister Ray”〉ですね。そういうの言い出すと長いんですけど(笑)」

――あのビートのイビツさに引っ張られるというか。

塔山「そうそう。スッと流れるんじゃなくて、引っ掛かっていく感じのビートにしたかったんですよね」

――それとは対極的なのが、“ストロベリーシンセサイザー”でしょうか。私、個人的に好きなんですが。

塔山「うわ~、俺的にはこれ、弱えかなってやってたんですけど、マスタリングのエンジニアからも好きだって言われたんですよね」

J.M.「どっちかっていうと万人ウケするほうの曲だと思う」

塔山「そう? じゃあ二度と書かんとこ。この曲、テーマは4つ打ちだったんですね。俺、あんまり4つ打ちで曲を書きたくないっていうのがあるんだけど、ちょっとやってみようと思って。で、どうせやるんだったら、ってデペッシュ・モードとかヒューマンリーグとかペットショップ・ボーイズとか聴きまくったわけですよ。それで、サビのシンセに命をかけて。でも、そうやって曲が出来たあとも、ぶっちゃけ最後まで収録せんとこうかなって思ってたんですよね、自分的には」

――それがどう逆転したんでしょう?

塔山「エンジニアが持ってる別のスタジオに、すごく古いアナログ・テープレコーダーがあるんです。メーカーなんやったか忘れたけど、THE BAWDIESの最新作もおんなじでした。で、エンジニアに言って、“ストロベリーシンセサイザー”と“鈴木アルビニくん”のドラムをそのテープレコーダーにコソッと通してこいと。通すとお金かかるんですよ」

J.M.「(小声で)言っちゃダメ」

塔山「大丈夫、大丈夫。で、“ストロベリーシンセサイザー”は、そのコソッと通してきてもらった2曲のうちの1曲なんですよ。そうしたらね、スネアっていうか、キックもそうだけど、昔のドラムマシーンのいちばんいいときの音みたいになって。すごい心躍るビートになったんですよ。聴覚的に、〈でっけえ!〉って。コクが出たっていうか、こってりしてるんですよ。もともとのドラムマシーンでも出せない、人力でも出せない音になったんですよね。エンジニアも言ってたんですけど、〈これ80年代の音ですよ〉って。そういう意味で、これ収録したい、ってなったんですよね」

J.M.「だけど、“シエロ・ドライブ・10050”とかを通しても全然良くないんだよね」

塔山「おもしろいもんで、曲によってっていうのがあるんですよ。“シエロ・ドライブ・10050”はすんごいぬるくなって。だから、アナログがいい、デジタルがいいっていうよりも、それ相応の使い方をやっていきたいんですよね。生バンドだけでもない、機械だけでもない、両者がうまく交わって、どっちが出る、こっちが出るっていうのを使い分けることによって、どっちでも出せないものを作っていきたいわけですよ、ライヴでも音源でも。音源は、ライヴの俺たちを刺激するもの。ライヴは次の音源を駆り立てるようなもの、っていうのをやっていきたい。そのアナログのひと手間でもすごい勉強になりましたし、訊かれたら思い出すぐらい、いろいろ楽しいことをやったんですよ。今回は」

――この曲はとてもキュートだと思うんですけど、同じドラムの音を使ってる“鈴木アルビニくん”も可愛いらしい曲ですね。

塔山「そうですよね。“鈴木アルビニくん”は独特のポップさがあるんですよ。J.M.のコーラスだけで全然踊れますよ。ピクシーズのキム・ディール並ですよ。〈可愛い……でも、なに言ってんだ? この人〉って」

――一応辞書で調べてみたりとかしたんですけど……。

J.M.「意味はない(笑)」

塔山「そのわけわかんないことをみんなで大合唱する楽しさ。〈わー!〉って言いながら〈こいつらなに言ってるんだろう?〉って(笑)」


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掲載: 2013年02月06日 18:00

更新: 2013年02月06日 18:00

インタヴュー・文/土田真弓