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インタビュー

三宅純 失われた記憶を喚起するような音楽とは?(4)



音楽同様に印象的なのが、ジャン・ポール・グードが手がけたアートワーク。


また、音楽同様に印象的なのが、フランスを代表するアート・ディレクターのジャン・ポール・グードが手がけたアートワーク。ジャケットやブックレットがたんなる記号ではなく、それ自体がひとつの物語を紡いでいるような特別な効果を持っている。

「80年代のグレイス・ジョーンズのジャケット・デザインや、ヴァネッサ・パラディが鳥かごの中で空中ブランコするシャネルのCMを見て以来、彼の作品の虜です。パリに行ったら仕事をしてみたい人No.1でしたが、その出会いは予想よりもずっと早く、そして親密なものでした。彼の作品群の中からアルバムにしっくりくるものを自分で選び、一緒に考えながら進めました。ジャン・ポールのイマジネーションと独自のスタイルに心から敬意を表します」

たんに音楽のアルバムということでなく、サウンドとビジュアルが渾然一体となって記憶の中に潜む音楽を表出する不思議な作品。それは、彼が音楽家としてだけでなく、ピナ・バウシュやヴィム・ヴェンダースといったトップ・クリエイターとのジャンルを超えたコラボレーションを行っている総合的なアーティストである証拠だ。

「このコンセプトを一枚のアルバムで表現し尽くせた感じがしないので、今作には“act-1”と名付けました。劇場作品にも序章、一幕、二幕があるように、このシリーズも展開していけたらいいなと思っています。実は“act-2”の曲もすでに出揃っているので、録音が済んだら発表しますよ。そしてなんと、この『Lost Memory Theatre』を舞台作品化しようという企画も進行中なんです」

今後は、映画や舞台音楽のサントラが控えているのと、ピエール・バルーのアルバム制作にも関わるという話もある。しかしそういった活動の主軸には、ソロ・ワークとしてこの『Lost Memory Theatre』シリーズが存在していくはずだ。本人曰く“パーツを見ると記憶の断片がレイヤーになっているのに、全体としては聴いた事も無いような音楽”は、ポピュラー音楽史上においても極めてユニークな作品といってもいい。そして、今後も僕たちの脳内を優しくこじ開け、記憶の奥底に眠る音楽を華麗に提示してくれるに違いない。




三宅純(みやけ・じゅん)

日野皓正に見出され、バークリー音楽大学に学び、ジャズトランペッターとして活動開始、時代の盲点を突いたアーティスト活動の傍ら作曲家としても頭角を現し、CM、映画、アニメ、ドキュメンタリー、コンテンポラリーダンス等多くの作品に関わる。3000 作を優に超えるCM 作品の中にはカンヌ国際広告映画祭, デジタルメディア・グランプリ等での受賞作も多数。ピナ・バウシュ、ヴィム・ヴェンダ−ス、ロバート・ウィルソン、フィリップ・ドゥクフレ、オリバー・ストーン、ジャン・ポール、グード、大友克洋らの作品に参加し、異種交配を多用した個性的なサウンドは国際的賞賛を受けている。 ジャンルを超越した活動を通じてハル・ウィルナー、アート・リンゼイ、デヴィッド・バーン、グレース・ジョーンズ、アルチュール・H、ヴィニシウス・カントゥアーリア等海外音楽家とのコラボレーションも多い。'05 年秋よりパリにも拠点を設け、精力的に活動中。

http://www.junmiyake.com/



カテゴリ : インタヴュー

掲載: 2014年01月21日 10:00

ソース: intoxicate vol.107(2013年12月10日発行号)

interview & text : 栗本斉(旅とリズム)