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シカゴ・アヴァン/ポスト・ロックの至宝ジョーン・オブ・アーク、大いなる変化を遂げた新作

Joan of Arc

 

結成20周年を迎えたグループのツアー…過去の人気曲に占拠されたセットリスト(新曲お断り)、黄金期のサウンド・フォーム/アンサンブルを頑にキープ(リアレンジもお断り)…本年3月に行われた、本格的なツアーとしては8年振りとなった日本ツアーにおいて、シカゴ・アヴァン/ポスト・ロックの雄、ジョーン・オブ・アーク(JOA)は、そのような定形イメージを鮮やかに覆してみせた。

来日記念盤『Firecracker in a Box of Mirrors』において再提示してみせたようにJOAサウンドの紛れもない中核的存在であるエレクトリック・ギターをスタンドに立てかけてマイクを握りしめるティム・キンセラ。約15年振りに復帰したオリジナル・メンバー、ジェレミー・ボイルと10年来のティムの相棒ボビー・バーグが紡ぎ出す電子音の奔流と、ボビー同様2000年代後半よりバンドを支えるセオ・カソウニスのタイト&ファットなドラムに載せ、ティム&メリーナ・アウシカイティスが吐き出す「What's the Fuck(なんてこった!)」という強烈な第一声。Cap'n Jazz、Owlsといったティムの前歴から期待される「エモの伝説」、ジェレミーの復帰に伴う「90年代シカゴ・サウンド」の復活、変則チューニングギターのアルペジオを軸にした「キンセラ系」、そのいずれとも異なる、ビート・ミュージックにも通じるスリリングなバンド・サウンドはオーディエンスの度肝を抜いた。

そして、日本公演で披露された最新型のJOAサウンドを余すところなく伝えるニュー・アルバムが遂に完成。USリリースは、近年のホームグラウンドPolyvinylでなく、インディアナポリスの気鋭のレーベルJoyful Noiseからというのも示唆的。コラボレーション、企画盤などのリリースが続いたが、完全オリジナルのフル・アルバムとしては、旧友ヴィクター・ヴィラリール参加、スティーヴ・アルビニ録音の『Life Like』以来、実に約6年振り。

ツイン・ギターの4人編成でギター・バンド道を極めてみせた前作から一転、来日時の5人のメンバーと、元メンバーのトッド・マッティ、元ウィルコのリロイ・バッハらが、楽器を自在に持ち替え、スタジオのみならず様々なロケーションで録音していった素材をバンド自らで再構築。さらに強烈なサウンドと激しくケミストリーを起こす、アルバム・タイトルに象徴される、怒りとユーモアとが絶妙に混じり合った歌詞世界。グループの歴史においても、現在のUSインディシーンにおいても、とてつもなく異端でありながら、アルバム全編を通してポップとすら呼べるような突き抜けた爽快感と常習性に満ちた怪作にして快作。20年の長きに亘り、誤解と称賛を等しく浴びながら、ときに横道に逸れつつも前進を続け、今も尚変化を愛して止まないティム・キンセラとJOAの面目躍如。

日本盤のみ、同セッションからの未発表トラック2曲をボーナス・トラックとして収録

 

 

 

 

タグ : UK/US INDIE

掲載: 2017年01月17日 15:01