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ヨス・ヴァン・ビースト・トリオ(Jos van Beest Trio)の新作『CLOSE TO ME』

Jos van Beest Trio

ジャズの土壌に色とりどりの花を咲かせるオランダのピアニスト、ヨス・ヴァン・ビースト。彼のピアノはふとした瞬間に、どういうわけか本当の言葉のように聴こえてくることがある。これは私の勝手な想像なのだけど、彼の「ピアノ」は彼の「声」なんだと思う。また別のふとした時には、その愛しいメロディをつい口ずさんでしまう自分がいる。それがヨスの音楽だ。トリオとしては約4 年ぶりとなるこのアルバムには、愛しいスタンダードやオリジナル、そしてザ・ビートルズのカバーという全1 1 曲が綴られている。

ハリー・ウォーレンの作の“You’re My Everything” はオープニングに相応しいゴージャズなナンバー。憧れのジャズクラブに初めて足を踏み入れた時のような、ジャズの紳士らしい雰囲気がある。オスカー・ピーターソンの名曲“ L’Impossible” は私のお気に入りだ。冒頭の旋律が紡がれた瞬間に明るい切なさがあふれ出し、泣きたいような何とも言えない気持ちになる。鍵盤に乗せられたメロディが舞っては消える儚さは、ボサノヴァのリズムが現れてからも一層、その美しさを際立てている。選曲において“Just Friends” と“On The Street Where You Live” は全体の大切なアクセントになっていると思う。ジャズのエスプリと自由なモチーフが瑞々しく、どこかノスタルジックな感情を含みながら、誰もが胸躍る演奏を聴かせてくれる。

別々の環境に生きてきた人が、何かに手繰り寄せられるようにヨスのピアノと出逢う。それはとっても素敵なこと。だってこのアルバムには、かならず大好きになる一曲が入っているのだから。

Text by 小島万奈

Jos van Beest Trio『CLOSE TO ME』収録曲
1. You're My Everything
2. Lady Madonna
3. Bossa Nova Do Marilla
4. L'Impossible
5. Just Friends
6. On the Street Where You Live
7. Medley: If / Feelings
8. Moonlight Serenade
9. Freckles
10. Old Folks
11. Medley for Sir Paul: Here There and Everywhere / Yesterday

Jos van Beest Trio:
Jos van Beest: piano
Erik Schoonderwoerd: bass
Ben Schroder: drums

掲載: 2017年07月14日 14:36