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WEEKEND JAZZ ~週末ジャズ名盤探訪 Vol.12

サラ・ヴォーン『枯葉』(1982)

SV

サラ・ヴォーン(vo)
ローランド・ハナ(p)
ジョー・パス(g)
アンディ・シンプキンス(b)
ハロルド・ジョーンズ(ds)

1982年3月1日、2日、ハリウッドにて録音

曲目:
1.時さえ忘れて
2.ザッツ・オール
3.枯葉
4.ラヴ・ダンス
5.ジ・アイランド
6.シーズンズ
7.イン・ラヴ・イン・ヴェイン
8.ユー・アー・トゥー・ビューティフル

【アルバム紹介】
1.全編スキャット!?歌詞は一切登場せず、ジャズ史上もっともユニークな“枯葉”
2.時はフュージョン全盛時代、数少ない80年代ジャズ・ヴォーカル名盤
3.バックは名手ぞろい、その名プレイも聴きどころ

キャノンボール・アダレイの“枯葉”はアレンジといい、ジャズ史に残る名演を実感できるものですが、サラ・ヴォーンの歌うこの“枯葉”は非常にユニークです。
それはなぜか?といいますと、ヴォーカル・ヴァージョンなのに歌詞は一切登場せず、全編をスキャットで歌っており、しかも、あの有名なメロディらしいメロディの断片も出てきませんし、その上、通常スロウなテンポで演奏される曲ではありますが、高速ビートでブッ飛ばしてゆきます。最初から最後まで「全員によるアドリブか?」という演奏が展開されています。

ジャズ・ヴォーカルの女王、サラ・ヴォーンはその深みのある歌声と、美しいヴィブラートをきかせた唱法で、亡くなった今でも、多くのリスペクトを集めるシンガーです。このアルバムは録音が1982年で、この時代はジャジーな音楽といえば、フュージョン、AOR、ブラコンが全盛の頃です。それゆえ80年代前半はトラディショナルなジャズの演奏による名盤は非常に少なく、サラ・ヴォーン自身も1980年前後はブラジル系のジャズ・アルバムをいくつかの残し、一方でビートルズの曲をTOTOのメンバーたちとAOR仕立てでカヴァーしたアルバムをリリースしております。

そんな中、スモール・コンボをバックにスタンダード、ブラジリアンのナンバーをミックス・アップした本作は会心の一作であり、ここで聴かれるサラ・ヴォーンの歌唱は円熟の極み以外のなにものでもありません。それがロング・セラーとなっている由縁でもあります。

そのコンボのメンバーが名手ぞろいというのも聴きどころです。 ピアノのローランド・ハナによるエレガントなスイング感と的をえたソロ・プレイ、ギターのジョー・パスによる流暢なフレージングとともに聴かせるスインギーなアプローチ、そしてベース&ドラムスにはフレキシブルに曲調や曲の変化に対応するアンディ・シンプキンスとハロルド・ジョーンズのリズム・セクション。
このアルバムの音楽を構築するためのベスト・メンバーだったといってもいいほどのマッチングとなっています。

【スタッフのつぶやき:この1曲を必ず聴いて下さい】
“枯葉”、そしてラストの“ユー・アー・トゥー・ビューティフル”。

“枯葉”は圧巻のスキャットで聴かせる1曲だとしたら、この最後の“ユー・アー・トゥー・ビューティフル”はサラ・ヴォーンのバラード表現の極みとも言える歌唱がきける1曲です。
バックはローランド・ハナのピアノのみ、というシンプルなセッティング。
イントロから歌に入るといきなり無伴奏で歌い始めます。語りかけるように歌われ、掘り下げるような低音の響かせ方、抑制をきかせた中高音で、表情豊かに歌い進み、そして絶妙なヴィブラートとダイナミクスで歌に命を吹き込みます。
曲の最後のワン・フレーズ「ビューティ」をロングトーンで結ぶ箇所(3分15秒あたり)で、聴く際ヴォリュームあげてみてください。ピアノが弾き終っても美しいヴィブラートをかけながらその後5秒ほどなめらかに声の音量をフェイド・アウトしていくところ、何度聴いても心がふるえます。サラ・ヴォーンというシンガーの凄さを実感します。

SHM-CD国内盤(一般普及盤)

タグ : WEEKEND JAZZ

掲載: 2019年02月01日 10:00