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広瀬悦子が幻のカルクブレンナー編ベートーヴェン「第9」に挑戦!歌唱はフランス語

広瀬悦子のベートーヴェン

リストとは全く異なる超絶技巧、歌唱はフランス語。
広瀬悦子が幻のカルクブレンナー編「第9」に挑戦!

今年5月のラ・フォルジュルネ音楽祭で上演され話題を集めるはずだった幻の「第9」の登場です。ベートーヴェン・イヤーの2020年には多くのピアニストがリスト編の交響曲第9番「合唱」をとりあげていますが、こちらは19世紀初頭のカルクブレンナーによる編曲で、もちろん世界初録音。キングインターナショナルが楽譜を提供し、パリ在住でフォルジュルネ音楽祭でもお馴染みの広瀬悦子の壮絶な演奏が実現しました。
フリードリヒ(フレデリック)・カルクブレンナー(1785-1849)はドイツ人ながらパリに住み大成功したピアニストで作曲家。何よりも若きショパンが熱烈に崇拝し、弟子入りを切望したことで知られています。作曲家としては4篇の協奏曲をはじめ多くのピアノ曲を残し、いずれも技巧的で派手な効果に満ちています。
1837年にはベートーヴェンの交響曲全9曲をピアノ独奏用に編曲し、ベートーヴェン好きのフランス王ルイ・フィリップに献呈しました。リストもやや遅れて編曲に挑みましたが、第9だけは断念し26年後の1864年にようやく行なったとされます。カルクブレンナー編は、少年時代のワーグナーが1830年に行なった版に次ぐ史上2つ目、それもピアノ界に君臨する大物によるものとしては第1号となります。
カルクブレンナーは10歳の時にベートーヴェンの前で弾き、彼から輝かしい将来を予言されたといわれます。古典派時代にピアノを習得したため、リストのような合理的テクニックではなく正攻法の書法を駆使しています。その難しさはすさまじく、一筋縄ではいかないものの広瀬悦子は持ち前の超絶技巧で克服、驚くべきことにナントのラ・フォルジュルネ音楽祭期間中に強行録音されました。広瀬の演奏は正確で曖昧なところはなく、轟くフォルテからオシャレな歌い回しまで絶品。さらにピアノの表現力と音色を知り尽くしていたカルクブレンナーは「第9」からベートーヴェン後期のピアノ・ソナタのような音世界を導き出しているのも興味津々です。
カルクブレンナーはワーグナーのように終楽章の声楽パートを残しましたが、なんとシラーの「歓喜の歌」をドイツ語ではなくシャルルマーニュによるフランス語訳を用いています。この録音でもニュアンスを重視するためフランス系歌手を起用。合唱はロシアのエカテリンブルグ・フィルハーモニー合唱団で、声の音圧も物凄い迫力で感動的。マリインスキー劇場の合唱指揮を務めるアンドレイ・ペトレンコが見事に統率しているのも聴きものです。「第9」好きなら目から鱗の落ちることの連続、たいへんな時代への日本、フランス、ドイツ、ロシア共同のエールとして響きます。

MIR 534(CD)
輸入盤・日本語帯・解説・歌詞対訳付

ベートーヴェン(カルクブレンナー編):交響曲第9番ニ短調Op.125「合唱」(全曲)
(フランス語歌唱)

広瀬悦子(ピアノ)
セシール・アシーユ(ソプラノ)
コルネリア・オンキオイウ(メゾソプラノ)
サミー・カンプス(テノール)
ティモテ・ヴァロン(バス)
エカテリンブルグ・フィルハーモニー合唱団
アンドレイ・ペトレンコ(終楽章指揮)

録音:2020年1月29日-2月1日/ナント市イヴェント・センター

カテゴリ : ニューリリース | タグ : BEETHOVEN 2020

掲載: 2020年08月06日 00:00