WEEKEND JAZZ ~週末ジャズ名盤探訪 Vol.141
ズート・シムズ『ズート!』(1957)
ズート・シムズ(ts, as)
ニック・トラヴィス(tp)
ジョージ・ハンディ(p, arr)
ウィルバー・ウェア(b)
オシー・ジョンソン(ds)
1956年12月13日、18日、ニューヨークにて録音
曲目:
01.ホワイ・クライ?
02.エコーズ・オブ・ユー
03.スウィム、ジム
04.ヒア・アンド・ナウ
05.フールズ・ラッシュ・イン
06.オスモーシス
07.恋のチャンスを
【アルバム紹介】
1.名テナー・サックス奏者ズート・シムズ、味わい深く落ち着いた独特のトーンが魅力
2.50年代半ば、リヴァーサイド・レーベルでの唯一のアルバム
3.編成はクインテット、レアな顔ぶれのメンバーとのセッション
前回とりあげましたスタン・ゲッツは元々ウディ・ハーマン楽団に在籍していた時期がありますが、それは第二期ウディ・ハーマン楽団のセカンド・ハード時代であり、サックス・セクションの4人は“フォー・ブラザーズ”と呼ばれて大いに人気を集め、ゲッツ以外、サージ・チャロフ、ハービー・スチュワード、そしてズート・シムズという顔ぶれでした。
ズート・シムズはゲッツ同様、レスター・ヤングのようなクールなスタイルのテナー・サックス奏者を手本に楽器をマスターしていった経緯がありますが、そのスタイルはゲッツとはまた違う、味わい深く落ち着いたトーンが魅力です。
本作は50年代半ばにズートがリヴァーサイド・レーベルに残した唯一のアルバムで編成はクインテット。メンバーにはトランペットにニック・トラヴィス、ピアノとアレンジにジョージ・ハンディと、なかなかレアな顔ぶれがそろっています。楽曲は1曲目~4曲目はジョージ・ハンディの奥さんでピアニスト、コンポーザーのフローレンス・ハンディのオリジナル、6曲目はドラムスのオシー・ジョンソンのオリジナル、4曲目と7曲目がスタンダード・ナンバーとなっています。
【スタッフのつぶやき:この1曲を必ず聴いて下さい】
ズートのクール・テナーが胸を打つバラード“フールズ・ラッシュ・イン”。
ロマンティック・スタンダード・ナンバーとして名高いこの曲はフランク・シナトラなどのヴォーカルでの歌唱が有名なナンバーですが、ここでのズートはテナー・サックスによる隠れたバラード名演を披露しています。
優美なテーマを極上のクール・テナーで歌い上げる様は絶品で、その音色に思わず引き込まれます。それを受け継いでリリカルなトランペットのソロが続き、後半ズートのテナーの情感豊かなソロに移行してゆきます。その後テーマに回帰することなく、見事なエンディングを迎えます。
本作の特徴として、ズートの吹くテナー・サックスの魅力とともに、3曲目と6曲目ではアルト・サックスに持ち替えてのプレイも聴くことができ、また別アルバムではソプラノ・サックスを吹いた傑作もあり、そのマルチぶりもズート・シムズというサックス・プレイヤーの人気の秘密です。
国内盤SHM-CD(一般普及盤)
タグ : WEEKEND JAZZ
掲載: 2021年08月20日 10:00