ポシュナー/#bruckner2024プロジェクト~第16弾 ブルックナー: 交響曲第3番(第2稿/ノーヴァク版)、アダージョ(1876年/ノーヴァク版)
CAPRICCIOレーベルと国際ブルックナー協会の主導で、ブルックナーの全交響曲のすべての稿を録音する企画 「#bruckner2024」の第16弾。
ブルックナーがワーグナーに献呈したことで「ワーグナー」のニックネームを持つ第3番には3つの稿があり、改訂の度に全体は短くなって、ワーグナー作品からの引用は削られてゆきます。第3稿の完成時にはブルックナーは第5番まで書き終えており、その経験が反映されていますが、この経過を「完成度を高めた」と取るか、「オリジナリティが減じた」と取るか、研究者でも評価が分かれます。CAPRICCIOの#bruckner2024では3つの稿すべてに加え、第1稿と第2稿の間に作曲された1876年のアダージョも収録(ノーヴァクが「アダージョ2」と命名したもの)。これで第3番創作と改訂の軌跡を同一指揮者の解釈でたどれることとなりました。
ポシュナーの解釈は重々しいサウンドやテンポから決別し、見通しよく、細部の指示をわかりやすく音にしてゆく姿勢で当初から一貫してきました。1876年のアダージョにはティントナーやヴァンスカの録音があり、いずれも演奏時間20分を越えますが、ポシュナーは約16分。瞑想性よりも清らかな抒情が感じられます。それでも第2稿(1877年)の第2楽章(アンダンテ…クワジ・アダージョ。演奏時間約14分)と比べると、この微妙なテンポ指定の違いをしっかりと認識して指揮していることがわかります。こうした態度は、異稿の録音が集積された今こそ意義や効用があらためて実感されることでしょう。
ブルックナー研究家のウィリアム・キャラガンはブルックナーの異稿について「自分の好み、理想の姿、究極の形を探すのはやめよう。すべてのスコアには価値がある。特に第3番は傑作だ。どのような姿であろうとも」と語っており、その言葉に感じるところのあるファンには是非聞いて頂きたい1枚です。
(ナクソス・ジャパン)
[日本語解説付き]
※国内仕様盤には石原勇太郎氏(音楽学/国際ブルックナー協会会員)による日本語の解説が付属します。
【曲目】
アントン・ブルックナー(1824-1896):
交響曲第3番 ニ短調(第2稿/レオポルト・ノーヴァク校訂版)
1. I. GemaBigt, mehr bewegt, misterioso 16:27
2. II. Andante. Bewegt, feierlich, quasi Adagio 14:08
3. III. Scherzo. Ziemlich schnell 6:32
4. IV. Finale. Allegro 12:27
5. アダージョ(1876年/ノーヴァク校訂版) 16:01
【演奏】
ウィーン放送交響楽団・・・1-4
リンツ・ブルックナー管弦楽団・・・5
マルクス・ポシュナー(指揮)
【録音】
2023年11月22日 ウィーン、放送文化会館、11月24日 ウィーン、ムジークフェライン(以上1-4)
2023年2月22日 リンツ、ムジークテアター・リハーサルホール(5)
総収録時間:66分
カテゴリ : ニューリリース | タグ : ANTON BRUCKNER
掲載: 2024年05月17日 12:00