インタビュー

Elisha La'Verne(3)

これまでにないエリーシャ

ところで、今回のアルバムはこれまでのダンサブルなエリ-シャ・サウンドに比べて、アコースティック的というか、オーガニック的というか、とてもしっとりした仕上がりになっている。これも彼女自身の意図によるものなのだろうか?

「うーん、スタイルってことに関してはそんなに意識したわけじゃないんだけど。ただ、今回はこれまでにやったことのないアイデアにいろいろトライしてみたのね。だから(これまでの)エリーシャっぽくはないかもしれないし、ある意味ではそのことが狙いでもあるの。結果としてとてもエキサイティングなものに仕上がったという自信はあるわ」。

さらに、前作あたりから深みを増してきていた歌詞の内容についても、今回はさらにその傾向を強めているように思う。例えば、リード・シングル“Skin”の歌詞は、黒人であるエリーシャ自身にとってもディープな内容のようだし。

「そうね。でも、あくまで私自身の気持ちを綴ったわけだけど、私は自分の肌の色にそんなに不満を持っているほうじゃないから、別の誰かの立場に置き換えて書いてみたの。それで、曲を録り終えてみて、こんなにディープに仕上がったことに自分でもビックリして……。スタジオで聴いてたら、自分で思わず聴き入っちゃったくらい。まるで、誰か他のアーティストの作品を聴いてるみたいにね。いままでにないグレートな体験だったわ」。

歌詞といえば、アルバムのちょうど真ん中にあたる8曲目に、フェンズワンという男性の詩人によるポエトリー・リーディングを収録しているのも気になるところだ。

「以前からポエトリー・リーディングには興味があって、ちょくちょくそういうイヴェントには足を運んでたんだけど、そんななかでフェンズワンのパフォーマンスを観たの。彼の詩は表現がとてもディープで、朗読の仕方もすごく気に入って。で、イヴェントが終わった後で〈ぜひ私のアルバムに参加して欲しい〉って自分の電話番号を渡したわけ。今回、彼はアルバムに入っている曲のタイトルを全て盛り込んで詩を書いてくれたんだけど、それがとにかく素晴らしいから、しっかりチェックしてね」。

ということで、エリーシャ本人のハンドリングが冴え渡った結果として、この『Sensuous』の充実ぶりが存在していると言えそうだ。初のセルフ・プロデュース作ということで、彼女自身にもこれまでとは違う手応えがあったようで……。

「そうね。セルフ・プロデュースでアルバムを作れたこと自体がハッピーなのに、そのうえ結果的に素晴しい作品に仕上がって、本当に満足よ。昨年、ジョジョの作品をプロデュースした時にもたくさん得ることがあったんだけど、今回は間違いなくそれ以上の自信を与えてくれたし、大きく成長できたと思うわ」。

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掲載: 2002年04月11日 15:00

更新: 2003年03月07日 19:06

ソース: 『bounce』 230号(2002/3/25)

文/Yogi Bear