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インタビュー

LOW-IQ-01

先っぽサウンド・ハンターが動き出した!! これまでの獲物はもちろんのこと、修羅場で培われたスキルまでもが濃縮されたセカンド・アルバム『MASTER LOW 2』。〈粋〉を極めた男が放つ究極のポップ・ソング集だ!!

 音楽に望むものは人それぞれ。僕にしてもそれこそ気分でいろいろと変わってくるもんだから、あるときはとにかくいい〈うた〉にひたすら浸ったり、またあるときはグルーヴに体を揺らしたり、またまたあるときはスピードとラウドネスでドーパミン放出したり、といった具合……まあ少なからずみなさんも同じようなものでしょう。そんでもってたまに、一度にあらゆる気分を満たしてくれるガッツィーかつ粋な音楽に出会えたりするから世の中捨てたもんじゃないね。ここんとこ、LOW IQ 01(ロウ・アイキュー・イチ)が作る〈MASTER LOW〉という作品がまさにそれで。

もてなしとプライドを忘れない伊達な音楽

 この男に関して──Hi-STANDARDらとともにシーンの先駆けとなったSUPER STUPID、あるいは遡ってエルマロのアイゴンこと會田茂一やニール&イライザ堀江博久らとともにグルーヴィーなロックを響かせていたアクロバットバンチ、さらに遡ってスカをベースとしたマノ・ネグラ的なごった煮ダンス・ミュージックで90年代初頭の東京を揺らしてくれたアポロス──といったバンドのメンバーとして御存じの方も多いかと。そのキャリアを知る人はこのソロ・ワークに集大成を見るだろうし、そうでない人も、LOW IQ 01が博覧してくれる〈粋〉な音楽で、きっちりエンターテインさせてもらえるはずだ。その時代における瀟洒の極みをまざまざと聴かせてくれた99年のソロ第1弾『MASTER LOW』から2年ぶりに届けられた『MASTER LOW 2』は、男気も若干アップ、しかしながら相も変わらぬ〈粋〉を余すところなく伝えてくれる。誤解を恐れずに言えば、お洒落(カタカナ変換不可!)なんであります。

「あ、そうですか? 今回は意外に直球狙ってみたつもりなんですけどね(笑)。でもそれは逆に嬉しいっスよ、イヤミのない粋な感じが出ればすごくいいな、と。僕はそういうことも必要だと思うんですよ。意外に僕が凝るところって、そういうとこかもしれない。それがそう(お洒落に)なってしまうということは、イイ具合に1枚目から2枚目にバトンがうまく渡ってるな、という感じがしますね」。

とはいえ、ファッション・ヴィクティム的な流行追っかけぶりとは無縁なのは言うまでもない。むしろ、一人の男の道程がきっちり刻み込まれた、ある種骨太な作品だ(でも楽し~く聴けちゃったり。そこがすごい)。だからここには、前作同様、パンク、ロカビリー、スカ/レゲエ、ジャズ・ファンク……といった音楽が雑多に、彼なりの仁義を通したうえで収められている。おっと、ユカリ・フレッシュのロリータ・ヴォイスをフィーチャーしたセックス・ピストルズ“Anarchy In The UK”のボッサ・カヴァー、なんてキュートな(!!)一品も。

「普通やんないっスよね、あんなロック5本指には確実に入ってる曲を(笑)。でも、ぜんぜん遊びの部分なんですよ。〈REVOLVER FLAVOUR〉のイヴェントに出たときにやったのがこの曲で。安易なんですよ、これだけ長年音楽聴いてきてんのに、ちゃんと英語で歌えそうなのが“Anarchy In The UK”ぐらいで(笑)。だから、最初っから知らない曲のつもりでやろうと思って。知って演っちゃうと、好きすぎちゃってオリジナルには勝てない。もちろん好きな曲なんですけど、ちょっと引いた目で見て、一度分解して。力んで〈俺こんなアレンジしました、どうぞ!!〉っていう感じじゃないんですよ。〈とりあえずやったから入れとっか〉っていう(笑)」。

そう本人は語るが、このトラックは多くの人(それこそフレンチ好きからパンクスまで!)のフェイヴァリットとなりうる、素晴らしい出来で。結果的に、“Anarchy In The UK”という曲のもつメロディーの魅力が、ひょっとすると原曲以上に際立っているのだからして。

「だから消化をしないとダメなんですよね。好きなまま出しちゃうと、とっちらかっちゃうと思うんですよ。2曲目(“CHANCES”)でポルカやってるんですけど、〈ポルカっぽい〉でいいんですよ、〈LOW IQがやるとこうなるよ〉っていう感じで。だからテイストなんですよね、あくまでも。で、フレイヴァーはLOW IQ節、っていうのがあればいいので」。

そう、そこが実は重要で。視野狭窄に陥ることなく、音楽の良さを確実に伝えようというもてなしの心意気。プラス、自分がやる意味。それも含めて、先ほどから〈粋〉という言葉でなんとか表現しようと努めている次第で。やはり、生まれも育ちも東京である彼の音楽には、なんというか〈江戸っ子気質〉みたいなものが感じられてならない。本当の意味での、東京の音楽(パリの音楽、ロンドンの音楽、と同様の)。そして、下の世代のミュージシャンからも慕われつつ、かといってふんぞり返ることなく音楽を作る仲間として同じ視線の高さで活動を続ける彼のアニキネスが、僕にはポール・ウェラーのそれとダブって仕方がないのだけど。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2002年04月18日 17:00

更新: 2003年03月07日 18:58

ソース: 『bounce』 226号(2001/10/25)

文/フミ・ヤマウチ