インタビュー

Vincent Gallo(5)

強烈な責 任感のもとで……

 〈No New York〉シーンがエキサイティングであると考え、PJハーヴェイやOOIOOが気に入っているという彼。独断的だが、深い洞察に満ちた発言をする彼は、天才のように思える。しかし、彼はそうでなないと言う。
 
「俺には才能というも のはひとつもないんだ。あるのはただ、持続性、忍耐力、集中力だけだ。先天的な才能というものは一切ない。少年時代に野球をやっていたころは、俺がチームでいちばんひ弱なやつだったから、いちばん努力しなければならない子だった。でも、ある時期に俺がチームでいちばんうまい選手となったんだけど、それはドラマ性の追求と目標の実現の結果だった。生か死か、というほど強烈な 責任感のもとで努力してうまくなったんだ。俺の親父は生まれながらにして天才的なシンガーで、完璧なピッチをもっている。 俺にピッチはないし、譜面を読んだり書いたりすることもできない。歌うため には相当な努力を要するんだ。 それでも下手なんだけどね。楽器の演奏も同じことだ。唯一、先天的な才能といえば、音楽においてはアレンジの仕方やメロディー作りで、映画においては コンセプチュアルな考え方ができることだね。小さいころから育んできて、発展してきたのは美的感覚(審美眼)だけかな。その理由は、俺の両親があまりにも美的感覚を欠いていたから、両親に対する反動や両親と自分との隔絶をめざして発展したんだ。でも、才能は一切もっていない」。

 しかし、彼は やってのけた。『When』の存在がそれを証明している。

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掲載: 2002年05月09日 14:00

更新: 2003年03月07日 18:04

ソース: 『bounce』 224号(2001/8/25)

文/荏開津 広