インタビュー

Jay-Z(2)

タイトルに込められた意味

 前作『Roc La Familia The Dynasty』は、珍しくジェイ・Zの直接的な体験がエモーショナルに表現されていたことで、優れたアルバムとなっていた。 

 それが今回は、たとえば表題曲“Blueprint (Momma Loves Me)”において、冒頭から人生のさまざまな局面で関わってきた人たちが実名でリリックスに登場するという形をとっている。 この曲では「俺の人生の始まりから現在に至るまでが、かなり正確に表現されている」という。

 「人生で自分の身にふりかかったことが、その人間を形成していくと思ってる。それによって、人はより強くなれるんだ」。

 〈青写真〉あるいは〈綿密な計画〉を意味する〈Blueprint〉という言葉がタイトルになっているのもこのあたりと関係していそうだが、このタイトルには異なるふたつの意味が込められているという。 ひとつは「人生の〈Blueprint〉、つまり、いまの俺を作り上げ、形成したもの、いまに至る信条や考え方のことだ」。

 今回のアルバムの特徴としては、2枚目のシングルとして今まさにヘヴィー・ローテーション中の“Girls, Girls, Girls”を彩るトム・ブロックの“There's Nothing In This World That Can Stop”のように、ボビー・バード、デヴィッド・ラフィン、ボビー“ブルー”ブランドらの曲をサンプリングし、彼らの曲で歌われている言葉に、ジェイ・Zが頷きながら、曲が展開していくというスタイルになっている。これらのサンプル・ネタは、どれも、1973~5年ごろのソウルという意外な共通点もある。

 「俺の成長期には、オフクロとオヤジが随分ソウル・ミュージックをかけてた。〈青写真〉を描くとなれば、バックにはそれに最適な音楽が必要だ」。

 ちなみに、ジェイ・Zは1970年生まれ。つまり、このアルバムにサンプリングされている楽曲は、物心がつくかつかないかのころの彼が自分の人生の〈青写真〉を描き始めた、まさにその当時の音楽なのである。

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掲載: 2002年05月09日 15:00

更新: 2003年03月07日 17:52

ソース: 『bounce』 226号(2001/10/25)

文/小林 雅明