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インタビュー

ブラック・ボトム・ブラス・バンド(3)

『Spiral』から嗅ぎ取れる〈スメル〉

──〈関西パワーのドッキング〉という受け取られ方を各所でされるんでしょうけど、本作にはそれを超えたものがありますね。

上田「いま関西、パワーないからね。阪神だけちゃう? パワーあんの(笑)」

YASSY「でも、関西っぽいかもしれない。やっぱ僕ら、濃いものが好きやから」

上田「確かに透明感はないな」(一同笑)

KOO「まあ、確かに静岡ではない(笑)」

上田「70年代とは違って、いま〈関西の音楽です〉っていうことに重要性はないよ。どこの街行っても、駅ビルとか同じ造りでしょ? あと、メディアの情報なんかも同じやし」

MONKY「でも、〈関西の音楽です〉って言って売れるんやったら大いに名乗るけどな(笑)」

KOO「嘆かわしいな(笑)。服とかもバラバラやしね。揃えたりしたほうがええんやろけど、そうするとみんな機嫌悪くなるんですよ」

MONKY「上の人に言われて、衣装揃えさせられたこともあったな。で、そのあとに〈カッコ良かったよ!〉とか言われても、〈アホ-〉と思うとった(笑)」

KOO「でもね、これでもいろんなこと試してるんですよ。恥ずかしなるビデオいっぱいあります(笑)。僕らも9年目ですからね、ごっついのありますわ」

──今後の期待として、〈さらに生活感が反映されるとおもしろくなる〉と思っているのですが。

YASSY「僕らの生活?情けないもんやで」(一同笑)

──上田さんのデビュー・アルバム『ぼちぼちいこか』の世界みたいな。

上田「あれは時代ですよ。この前とある雑誌で、〈あのジャケのように、くいだおれ人形の前に立っている僕の写真を撮りたい〉って言われて、断りましたもん。もう、そんな時代やない。おぞましいっていうかね。あのころ僕ら、例えば工場で一生懸命働いてる人らがライヴを観にきてくれて、〈良かったわー、明日も頑張る〉って言うてもらえるようなものを演っていた。そんな人たちに届くような音楽をやろうという意識が強くあった。で、なんで80年代に入ってやめたかいうたら、そういう人がいなくなった。届け先がなくなってしまったんでね。意味合いこそ違うけど、このアルバムにはBBBBの生活感がスゴイ出てるよ。なんていうか、〈スメル〉って感じのものが。ファンキーな匂いがしますもん。僕、そこがうれしいんですよ」

 お互いのリスペクトが、感動的な螺旋を描いている『Spiral』というアルバム。両者のスメルが合わさり、勢いよくパーっと拡がっていく様に、やけにでかいスケール感を抱かずにはいられない。

上田「僕もみんなもそうやけど、先達のように演奏しようなんて思ってない。確かにそういう音楽が好きだけど、もっとその先にある自分たちのアイデンティティーに向かっていってるわけやから。最近の音楽家は、CDの売り上げで一喜一憂してるじゃないですか。そういうのはどんどん外へ出ていくことによって変わっていくし、俺も、〈俺は上田なんや〉ってことを外国で何度となく考えさせられた。おもしろいものをまずは作るっていうプライオリティーを、ずっと持ち続けてほしいんですよね。あれ? 俺、締めにかかってる??」(一同笑い)


*BBBBのアルバムを紹介。左から、KYONとの競演作である99年の『DANGEROUS HOY! SAUCE』、KYONとの競演作である2000年の『Screaming! HOY STATION』(共にCONSIPIO)、2001年の『KINSYASA!』(音夢)

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2002年05月30日 14:00

更新: 2003年03月03日 22:34

ソース: 『bounce』 232号(2002/5/25)

文/桑原シロー