ニューオーリンズ→J-Pop、彼らが注入したそのエッセンス
思い返せば93年とはBBBBが結成された年であるが、彼らのリスペクトするブラス・バンド・スタイルによるニューオーリンズR&Bコレクティヴであるダーティー・ダズン・ブラス・バンド(DDBB)が、アルバム『Jelly』をリリースした翌年のことでもある。おそらくこれは偶然だろうが、この時期DDBBは革新的とされたブラス・スタイルから離れはじめ、言い方によって、BBBBはDDBBの空白期間(99年に復活)を埋めるかのように結成されたように思えるのはたいへん興味深い事実。それほどまでに彼らがDDBB、ひいてはニューオーリンズ産の音楽に対して愛情を注いでいることは──ロバート・パーマーをはじめ、数多くのアーティストと共演することでセカンドライン・ファンクを広く一般に知らしめたミーターズと同様に──日本国内外問わずさまざまなセッションに参加していることからもあきらかである。願わくばBBBBも、そのフットワークの軽さをして〈地球上のほとんどいたるところで演奏した〉といわれている、ニューオーリンズが誇るジャズ・トランペット奏者、ルイ・アームストロング(彼こそニューオーリンズ・マナーを知らしめた男!)を越えるような勢いで活躍していただきたいものだ。
*文中に登場するアーティストの代表作を紹介。左から、ダーティー・ダズン・ブラス・バンドの92年作『Jelly』(Columbia)、ミーターズのベスト・アルバム『The Very Best Of The Meters』(Rhino)、ルイ・アームストロングの1947年作『Satchmo At Symphony Hall』(Decca)
……というわけで、BBBBの活躍ぶりを調査したところ、驚くほど多岐に渡るセッション・ワークの全貌が判明。筆者がわざわざエールを贈るまでもなくすでに大活躍中の彼らは、気軽なホーン・セクションからドンと胸を預けられてのフル・バンド稼働まで、さまざまな要望に応えている様子。その音楽性がダイレクトに直結したホーン隊の参加作品を挙げれば、スクービードゥー『BEACH PARTY』収録の“こぼれそうな涙”と“OH YEAH!”やウルフルズ『トロフィー』収録の“A・A・P-FUNK~DO-YA, みんな!~”など。意外なのは、テイトウワ『SOUND MUSEUM』のオープニングを飾るヒップホップ・マナーのタイトル曲、さらに驚かされるのが、RIP SLYMEの傑作『5』。後者はフル・バンド+KYONという形で参加し、RIP SLYMEのカラフルな楽曲にマルディグラ・ムードを注入しちゃったり……もしかして、彼らは濃いのがお好き?と思いきや、クラムボン『Re-clammbon』収録の“Re-華香るある日”で聴けるような、和やかなオープンエアのムード作りにも一役買っていたりもします。つまり、美味しいガンボ料理のために、〈BBBB〉という素材が必要とされている、ということなのです。
*文中に登場するアルバムを紹介。左から、スクービードゥーの2001年作『BEACH PARTY』(DECKREC/UKプロジェクト)、ウルフルズの99年作『トロフィー』(東芝EMI)、テイトウワの97年作『SOUND MUSEUM』(akashic/イーストウエスト)、RIP SLYMEの2001年作『FIVE』(イーストウエスト)、クラムボンの2002年作『Re-clammbon』(ワーナー)
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