インタビュー

エゴ・ラッピン(3)

その曲に対する愛情が録音されてほしい

前作に引き続き、関西時代からの気の置けない友人たちのサポートを骨格として、曲ごとにmama! milkの清水恒輔、acoustic dub messengersの菅沼雄太、エマーソン北村、リトル・クリーチャーズの鈴木正人らが参加。それぞれのセッションごとに、まるで別のコンボが出現したかのような息の合ったプレイが素晴らしい。とくに、エマーソン北村と中納/森の3人による“5月のクローバー”は、TR-808のチープなリズムとオルガンを軸とした、これまでになかったタイプの楽曲だ。

「エマーソンさんのライヴを観て、いっしょにできませんかって話をしたんです。私はこのTR-808のビートに合うように言葉の乗せ方まで意識したし、淡々としたなかでの曲の展開もやっぱり必要やなって思った。この曲は私にとってすごく勉強になった」(中納)。

頭の中にイメージするのが、単に〈30年代のスウィング〉だったり〈場末のキャバレー・サウンド〉みたいに具体的な音の模倣であれば、スタジオ・ミュージシャンを呼べば話は終わる。しかし、彼らが求めているものは、もっと特別なオリジナルの音楽。だからこそ、共に演奏する心から尊敬できる仲間と正面から向き合って、そこから何が生まれるかを待ち続ける。

「私や森君とかのイメージを伝えて、返ってくるものが面白い人やないと。いつもサポートしてくれるメンバーも含めて面白い人やし、自分と合うと思うし」(中納)。

「いっしょにやりたい人は、〈この曲をやってもらえませんか?〉ってテープ渡すっていう順序を踏むし、現場で〈あ、それいいな!〉っていうのが生まれてこなくちゃ。単なる参加ミュージシャンじゃなくって、その曲に対する愛情がそこで録音されてほしいんです」(森)。

2人をはじめ、すべての演奏家たちの顔がはっきりと見えてくるゴツゴツとした音。濃厚な愛と情熱をスパイス代わりに……是非!

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掲載: 2002年07月25日 12:00

更新: 2003年02月13日 12:16

ソース: 『bounce』 234号(2002/7/25)

文/小田 晶房