インタビュー

トラディショナルと都市の洗練を共存させる音楽たち──エゴ周辺の邦楽アーティストにも注目!

エゴのオシャレなイメージ(?)を裏切るかのように『Night Food』には野性味と繊細さが共存している。それは今作に参加したアーティストからの作用かもしれない。そのライヴ・パフォーマンスでどこまでもオーディエンスをアジテイトし続けるオーサカ=モノレールと、シャンソンや映画音楽をアコーディオンとウッドベースの怪しくもさびれたヴェルヴェットでくるんだmama! milk。〈ニューウェイヴ〉をキーワードに共振しあうというなら、アコースティックな楽器を用いながら方法論としてテクノやトランスへの接近を繰り返すリトル・クリーチャーズや、ナチュラルな質感とたたずまいでインストゥルメンタルの旨みを凝縮したacoustic dub messengersもまた、このアルバムに深みを与えているのだ。

アルバム参加以外のエゴ周辺アーティストにも目を向けてみよう。中納は、フロアを沸かせたファンタスティック・プラスチック・マシーンによる4つ打ちトラック“Beautiful Days”の上でもブルースを忘れなかったが、栗原務(リトル・クリーチャーズ)との実験的音響ユニットJu Ju KNEIPPにおいても、そのヴォーカリゼーションの才能をいかんなく発揮している。エゴの事務所内の別レーベルplantsより作品をリリースしたノマディックな中南米音楽集団copa salvoはラテン、サンバ、ブラジリアンなどの豊かな実りをラグドにそして明晰に吸収する。その粋さ加減はDJ森ラッピンの選曲ぶりとも通じるかのよう。クラシック“UNDER MY SKIN”が忘れられないデタミネーションズとエゴは互いにリスペクトし合う存在だ。おだやかな狂気と限りない優しさを湛えた愛すべきオーセンティック・スカ・バンド。キューバ・レコーディングの芯の太い演奏に、心に染み入る歌を重ね合わせたAsa festoon(アルバムのライナーにはエゴの2人がコメントを寄せている)のメロディーを聴くと、エスニックな音楽への憧憬を幻想としてのみならず、自らの生活へ投影させ、しっかりと地に足の着いた表現にしていくことが大切なのだと気付かされる。

ここに紹介したミュージシャンの作品はカフェ・ミュージックにも適しているが、それだけではない。エゴの音楽に共通する、トラディショナルをベースにしながら都市の洗練も受け入れる姿勢。そこから生まれるたくましい音の塊とピリリとした緊張感をこそ彼らの作品で楽しんでほしい。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2002年07月25日 12:00

更新: 2003年02月13日 12:16

ソース: 『bounce』 234号(2002/7/25)

文/駒井 憲嗣

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