インタビュー

RIP SLYME

また新たなカードと強力なフックを手に入れた5人。日々拡大し続ける彼らへ、そろそろ次なる枠組を与えようではないか? RIP SLYMEが収まるべきところ──可能性に満ちあふれた『TOKYO CLASSIC』!!

強靱さを備えた広い枠組


〈It's Too Late To Stop Now!!〉とはアイリッシュ・ソウルの大御所、ヴァン・モリソンがライヴで感極まったときに必ず叫ぶセリフだそうだが、昨年秋にリリースしたシングル“ONE”から始まったRIP SLYMEの新たなる歩みにもその言葉は実にぴったりくる。

「いまの時代、お笑いよりたいへんなことはないっすよ。逆に音楽を作るのは簡単な気がするんだけど、どう?」(PES、MC)。

「うん、早くなった」(FUMIYA、DJ)。

「でも、“FUNKASTIC”を作ってたときにすごい悩んでたりもして、曲の制作中に〈プロモ・クリップの話をしようぜ〉っていうことになったんです。最初はなんのことかよくわからなかったんだけど、ちょっと経って〈なるほど〉って思えた」(PES)。

「つまり、それは角度を変えようってことだったんですよ。俺なんかもヒップホップ好きになったのは、プロモ・クリップを観て好きになったっていう感じで、音楽からバーンと入ったわけじゃないし。俺らの世代で山奥に住んでて、ナイス&スムースを聴いてヒップホップに目覚めましたってヤツはまずいないんじゃない?」(ILMARI、MC)。

必要なのは強力なフックである──彼らは野暮な明言を避けながら、そう言いたいらしい。つまりRIP SLYMEは、コアなヘッズからお茶の間に至る不特定多数のリスナーに向け、彼らなりに筋を通したヒップホップを届けなければならないことを重々承知しているのだ。その意味で、奏でる個性の5重奏に『FIVE』という枠を与えた前作に対し、ニュー・アルバム『TOKYO CLASSIC』では彼ら5人の日常を内包した街、それも音楽のミラクルが至るところで日々生まれている街という俯瞰した枠組が設定されている。

「枠組について言えば、その枠を広くとっておいたほうがそこになんでも放り込める。そんな意味での『TOKYO CLASSIC』でもありますよ」(RYO-Z、MC)。

そして、もちろんこのタイトルはフィンランド公演を経験し、この夏にアジア・ツアーを控える彼らの広がりゆく世界を指し示してもいるだろうし、そのことを象徴するかのように、本作はLAの新世代ファンク・バンド、ブレイケストラによるジェイムズ・ブラウンのカヴァー“Chicken”をイントロダクションに幕を開ける。

「昔からファンクはすごい詳しいってわけじゃ全然ないですけど、ブレイケストラは若い人たちがやってるっていうことで、いいなと思った。シングル“FUNKASTIC”で頼もうと思ったけど、できなかったから今回ちょうどいいかな、と」(FUMIYA)。

「〈お茶の間にブレイケストラが届くんだ〉って考えるとすごくいいですね。単純におもしろい!(笑)」(RYO-Z)。

「RYO-Zくんはむっつりタイプなんでね、〈ヒップホップにしときつつ、こっそり忍ばせとく〉みたいな(笑)」(PES)。

「でも、向こうからブレイケストラの人が歩いてきてもわかんなくねぇ? 俺、絶対わかんないっすけどね。それってすごいのかどうなのか(笑)」(ILMARI)。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2002年07月25日 21:00

更新: 2003年02月10日 15:09

ソース: 『bounce』 234号(2002/7/25)

文/小野田 雄