インタビュー

KYOTO JAZZ MASSIVE(3)

日本のジャズ、フュージョンとKJM

 そのように、UKやドイツのシーンと密な連携をとっているKJMだが、2人がルーツとする日本のジャズメンとの関係も興味深い。

「カイディ・テイタムのルーツがロイ・エアーズだったりするわけじゃないですか。ヨーロッパの人にとってのドナルド・バードが僕らにとっての日野皓正だったり、彼らにとってのジェイムス・メイソンが僕らにとっての川崎瞭とか。いまフューチャー・ジャズが流行ってるから、とかじゃないんですよ。日本の70年代のジャズ、フュージョンが僕らの根底にある。だから外国に行ったときに、〈お前らのやってる音楽は日本の音楽か?〉と訊かれたら〈そうや〉と言える。いまだからこそ〈俺らが継承者やで〉って」(修也)。

 たとえば“The Brightness Of These Days”やブラジリアン・フュージョンの“Shine”、また世界的にクラブ・ヒットした“Eclipse”や、4つ打ちのインストを注意深く聴いて欲しい。そこにそこはかとなく漂う〈日本的な音〉こそ、実はアルバムにちりばめられた多彩な旨味を繋ぐ核かもしれない。KJM特有の叙情(日本)的なメロディーや細やかな曲展開はこれまでも海外で高く評価されてきたが、このアルバムでそれは決定的なものになりそうだ。

「ブラジル音楽の〈サウダージ〉みたいに、まだ呼ばれていないものかもしれないけど、たぶん日本特有の〈泣き〉っていうのがあって評価されているんやと思うんですよ。自分たちはまだわかってないですけどね。それと、DJとしては僕らはロンドンよりドイツのDJに近いかな、と思います。ウェスト・ロンドンのDJたちがブロークン・ビーツをかけて、ディープ・ハウスかけてブラジルかけて、っていうのはないと思うんです。もっとコンセプトがあるというか。そういう意味では僕らやジャザノヴァ、ライナー・トゥルービーたちのほうがもっとオープンだといえるかも知れない」(好洋)。

 旧譜と新譜、ジャンルを飛び越えてあらゆる音をクロスさせるKJMならではのDJポリシーは、むろんアルバムに生きている。一枚を通した見事な構成にも唸らされるはず。まずはオープン・マインドでお試しあれ。

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掲載: 2002年09月05日 16:00

更新: 2003年02月13日 12:10

ソース: 『bounce』 235号(2002/8/25)

文/池谷修一