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インタビュー

DABO

『PLATINUM TONGUE』の衝撃から1年……プラチナのベロから倍音ヴォイスを繰り出すナチュラル・ボーンMC、DABOの新作が登場だ。硬軟自在にマイクを操る余裕綽々のヒットマンはふたたびシーンを狙い撃つ!!

全部メタファーなんだ


 DABOが一流のラッパーであることに疑いはないし、彼のスキルについては、これまでもさまざまな形で論じ、考察されてきた。そのひとつとしてヒップホップからはもちろん、それ以外からの幅広い引用を駆使する、表現法の引き出しの多さと観察眼が特徴的だ。ただ、そうして繋げられた言葉はひとつの核心に近づきそうでいて、なかなか近づかない。結局は核心さえもクリアにならないのだけど、おぼろげながら見えている。そういった謎解き(あくまでも楽しませながら)に近いリリックが、DABOならではの魅力のひとつでもある。ラッパーとしてのスキルに加え、言葉を操る人間として、言葉に対して強い意識を感じさせるのがDABOだ。本人も「言葉を使って遊んでいる意識がある」と認めたうえで、こう語る。

「サザン(オールスターズ)とか好きだったんですよ。桑田佳祐さん、大好きで。言葉とかリリックにインパクトがある人が好きで、中学の頃とかブルーハーツも好きで好きで。レピッシュとかの怪しい、毒々しい雰囲気とか。いい人一辺倒じゃない歌も好きで、“La La Means I Love You”とかああいう曲も大好きなんだけど、でも、それだけじゃないだろう、っていうのがあって。いまのアメリカのヒット・チャートとかさ、〈あんたなんかもう別れるから、いままで貸した物は全部返しなさいよ! 返しなさいよ!〉っていうのがフックになってる曲が流行ったりしてるわけじゃん(笑)。本当に現実って感じじゃないですか。俺はそうじゃなければいけないと思うし、ポップスっていうくらいなんだから、世相を反映させてなきゃいけないと思う。俺がやってるのはヒップホップで、自分からポップスだって言うつもりはないけど、お金はいらない、って思ってやってるわけじゃないから、ポップス……大衆音楽ですよね」。

 いま名前が挙げられたアーティストたちは、いずれもオリジナリティーが高く、多くの後続に多大な影響を与えてきたアーティストばかり。影響をモロに自己の作品に反映させるフォロワーが多いなか、DABOは彼らから受けた影響を自己のスタイルを確立する刺激に転化し、言葉そのものに対して、より意識を強めていったのかもしれない。リリックに頻出する〈キツい表現〉についても“Wannabees Cup 2002”から“Murda!!!!”への流れを例にとって、こう説明する。

「俺は気に入らないラッパーを殺していっちゃうんだけど、こういうのはエンターテイメントとして成立しにくいんですよ、日本は。子供から大人まで笑えるブラック・ユーモアっていうのがない。でも、俺は多少お気楽な感じとかが好きで、ユーモアは絶対に忘れたくないんだよね。〈なんでこんなこと言うの?〉とか思われもするんだろうけど、そういうブラックなところって日本では伝わりにくいじゃない? 俺が殺すとか押し倒すって言うのは、お前をロックする、ってことでさ。言葉どおりに受け取る人もいるけど、すべてヒップホップのことを歌ってるわけで、全部メタファーなんだ。キツいユーモアに慣れさせたいんですよ。ビートたけしさんとか、立川談志さんとか爆笑問題とか、言いたい放題の人ってなぜか芸人のなかでは異端的な扱いをされるでしょ? みんな本当は陰口とか言うじゃないですか。俺がやりたいのは、そういうちょっと気に障る、っていう感じの軽口なんだよね」。

▼『HITMAN』に客演したアーティストの作品を紹介。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2002年10月03日 14:00

更新: 2003年02月13日 10:56

ソース: 『bounce』 236号(2002/9/25)

文/高橋荒太郎