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インタビュー

DABO(2)

今回はリスナーに語りかけている

 そんな本来のDABOらしさを維持しつつも、今回のセカンド・アルバム『HITMAN』は、新たなる意識と魅力が反映された素晴らしい作品となった。本人いわく「DABOの基本としてなんにも考えないで作ると、ああいうふうになるよ、っていうモノ。俺が好きなラップ/ヒップホップ、俺の趣味っていうのをドカっと示そうと思って」作ったというファースト・アルバム『PLATINUM TONGUE』に対し、今回は前作にはない新たな課題が設けられていたようだ。

「今回のアルバムのプロジェクトの挑戦には、さらに正直になってみようかな、っていうのがあって。俺はもともとフリースタイル・ラッパーで言葉で遊ぶのが専門だから、テーマもあるんだかないんだかわかんない、っていうのがすごい好きで。トピックは曖昧にしといて言葉だけで遊ぶんだったら、余裕なんすよ。慣れっこなことで。そこを追求していくのもいいけど、トピックを決めたうえでいつも通りのスムースなフロウで、タイトなライミングで、ちゃんとひとつのトピックについてストーリーテリングをしたかった。昔からやりたかったんだけど、俺のめざしてるレヴェルのストーリーテリングって難しいんですよ」。

 こうした試みは、アルバムに先駆けてリリースされた“恋はオートマ”に顕著なように、恋愛ソング(とはいっても、一筋縄ではいかないDABOらしい角度からの視点で描かれた、ただの恋愛ソングではない)や、彼の意外な一面(とはいっても、常に冷静に客観的な視点で物語っている)を見るような“もしも明日が……”など、「リスナーに歩み寄ってるし、語りかけてもいる」というように、アルバムの随所で確認できる。

「俺が変わらなくても周りが変わることもあるし、周りが変わらなくても俺が変わることもあるのかもしれない。アルバム作って、ツアーやって、いろんな人に会って、いろんな事件が起こって……オチてたりとかしてても、俺はレコーディングとかに私情を絶対に持ち込みたくなくて。でもやっぱりリリックとかには出てしまうから。頭のなかで膨らんでいることとかあって、いいことも悪いことも悲しいことも、ゴチャゴチャになってるのを精神統一して書くか、っていう感じで。最近、歩いてるだけで〈かっこいい~〉とか言う人もいるけどさ。それは違うから。だってそれだったら俺、ずっと言われ続けてるはずだもん(笑)。10年前だって〈かっこいい~〉って言われてるはずですよ。まあ、思い入れと勘違いの産物なんだろうけど(笑)。ただ、内面は外見に出ると俺は思ってるから、別にかっこいい服着てなくてもさ、かっこいい奴はかっこいいし。やっぱり中身が全部だと思うんですよ。〈かっこいい〉って言われるのはいいんだけど、薄っぺらく言われてる気がしてね。俺のラップ込みで言ってくれるのならいいんだけどさ。ライヴ中に〈かっこいい~!〉って言われたら、〈そうだろ! 俺のライヴかっこいいだろ!〉って言えるけどさ」。

 昨年の『PLATINUM TONGUE』が引き起こした反響と衝撃は大きく、そういった環境の激変は少なからず本人の内面にも無意識のうちに何らかの影響を与えているのかもしれない。だが、ラッパー、DABOのアティテュードは変わらないし、言葉を使った表現法はさらなる進化を遂げている。たとえどんなに成功を収めようとも、この男は変わらないし、ヒップホップ・マナーに溢れた遊び心を忘れないのだ。そして、言葉という表現ツールを使って、あの手この手で我々に、無限の表現法を提示し続けるに違いない。

▼DABOの作品。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2002年10月03日 14:00

更新: 2003年02月13日 10:56

ソース: 『bounce』 236号(2002/9/25)

文/高橋荒太郎