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インタビュー

さらなる高みをめざすパール・ジャムの歩み

『Ten』 Epic(1991)
ストーンのギター・リフとエディのヴォーカルという、バンドの出発点に根ざしたデビュー作は、以降の作品に比べると70年代ハードロック色が強く、少々メタリックに傾いたプロダクションが彼らの作中では異質だが、ライヴで各楽曲の素晴らしさは証明済み。失うものがなかった、結成から間もない5人のがむしゃらさを刻んでいる。

『Vs.』 Epic(1993)
発表後1週間に米国で95万枚のセールスをあげた初期の代表作。盟友ブレンダン・オブライエンが初めてプロデュースに参加したのもこの作品だ。ガレージ寄りのアグレッシヴな“Go”からアコースティック・バラードの“Daughter”まで音楽性の幅も広がり、ライヴ色を前面に押し出した彼ら独特のダイナミックなサウンドの原型が形作られた。

『Vitalogy』 Epic(1994)
人気の絶頂にありながらも、意に反して世代のスポークスマン役に祭り上げられたプレッシャーに苦悩していたエディは、カート・コバーンの自殺にさらなる衝撃を受ける。そんな当事の彼の心の内を反映し、重苦しい緊張感を湛えたサード・アルバム。極端にアンチ・コマーシャルな方向性もエディが音作りを主導していたことを示唆している。

『No Code』 Epic(1996)
解散寸前まで追い詰められていた彼らが、ニール・ヤングやヌスラット・ファテ・アリ・ハーンらとのコラボを経て足元を見つめ直すことになった、ターニング・ポイント的アルバム。もしくは〈癒し〉の一枚、か? 内から自然に流れるに任せたような音も言葉も脱力感に貫かれており、それゆえの混沌としたムードさえも心地良い。

『Yield』 Epic(1998)
〈譲歩〉もしくは〈産物〉を意味する言葉をタイトルに掲げ、前作から始まった内省のプロセスをさらに推し進めた5枚目。メンバー全員がソングライティングに参加し、パール・ジャム=エディ・ヴェダーではなく共同体としてのバンドの在り方を追求。リラックスして純粋に音楽作りを楽しみつつ自信を回復していく彼らの姿を伝えている。

『Binaural』 Epic(2000)
シングル“Last Kiss”の大ヒットを経て、久しぶりにアグレッションを爆発させる一方、チャド・ブレイクをプロデューサーに迎え、当時の音楽シーンの傾向に応えるようにアブストラクトな音響的実験性を採り入れた意欲作。音が二分されているような印象もあるが、彼らはふたたび大きな音を鳴らして前のめりの姿勢をとりはじめた。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2002年11月28日 12:00

更新: 2003年02月07日 15:14

ソース: 『bounce』 238号(2002/11/25)

文/新谷 洋子

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