インタビュー

ザ・ハイロウズ

ロックンロールの使者たち5人から、またもエキサイティングな14の結晶が到着。数々のフェスティヴァルへの出演などによってさらに新しいリスナーを巻き込み続ける、不死身のエレキマンたちを迎え撃とう!!

3分の曲って3分あれば録音できる


「こりないよねー、なんで毎回、そんなこと訊くの?(笑)」(甲本ヒロト:以下同)。

でも、訊くんです。やっぱり訊いてみなきゃ……って、アルバム・タイトルのこと。ザ・ハイロウズの新しいアルバム『angel beetle』がリリースされる。これまでも取材のたびに、「このアルバム・タイトルはどこからきたの?」と尋ねてきたのだけれども、決まって答えは「別に理由とかないんだよ」。そして今回も「別に特別な理由はないんだ」そうだ。「何か〈こういうものを作りましょう〉みたいなことで作ってるわけじゃないからね」とヒロトは言う。

「だいたい1年くらいすると、曲ってあるんだよね。アルバム1枚分くらい。アルバム作るために曲作ってるわけじゃないからね。それって違うじゃん。あー、もうこんなに曲たまっちゃったよー、って仕方なくアルバム作ってるんだから(笑)。だから、別々に出来た1つ1つの曲を14曲入れました、っていうものに名前つけられないよ。アルバム・タイトルに意味なんてないんだ」。

それにしても、ほぼ1年中、ツアーをして回っている彼ら。いったいいつレコーディングする時間があったんだろう、と思う忙しさなのだが、実はこのアルバム、録音自体は、この夏大暴れしたフジロック・フェスティヴァルの前に終えられていたという。

「だって3分の曲って3分あれば頭からケツまで録音できるじゃない。バラバラに録ってみようとか、あれこれするから時間かかるんだよ。せーの、ってやれば1曲には1曲分の時間しかかかんないんだから、14曲あったってそんなに時間かかんないよ」。

たしかにそのとおり。だからといって、別にハイロウズは1発録音にこだわっているわけではない。1発でOKなものもあれば、あとからヴォーカルだけ入れ直したり、あるいは何かほかの楽器を重ねたりもする。バラバラに録音したほうがよければそうするし、曲によってそれはどういう形でも、その曲に合ってればいいんだから、と。

「バンドにはその音楽の方向性とか決めてやっていくバンドとそうじゃないバンドとあるからね。ラモーンズみたいなバンドは方向性とかがハッキリあって、それがバンドのキャラクターをより浮かび上がらせているわけだ。でもハイロウズはそうじゃないからね」。


何か一つに限定していくと、曲を作っているヒロトもマーシー(真島昌利)もどこかにフラストレーションをためこんでしまうという。それは表現者としての欲求の問題だ。表現したいこと、表現する方法は常に変化する。それはとてもまっとうなミュージシャンとしての欲求に間違いない。だから時々、それを解放する。楽曲やアレンジがヴァリエーションに富んでいる今回のアルバムはある意味、そんな感じなのかもしれない。

「だって去年だったら絶対ダメってオレ言ってたじゃん、ってことがOKだったりするんだよ(笑)。あれ?って。でもいいんだよ、だってなんでもアリなんだもん。ロックってなんでもアリだからやってるんだもん」。

だから、「音楽をカテゴライズする人にはハイロウズはわかりにくいだろうね」とヒロトは笑う。「ハイロウズのメンバーはみんな、そういうの暗黙のうちにOKなんだね」と尋ねてみる。

「うん、そういうのは楽だよ、みんな。自分一人だったらヘンなものになるかもしれない。けれども、マーシーも曲を作る。そのバランスがすごくいい、すごく助かっている」。

でもマーシーもそう思ってるんだろうか?

「思ってなかったらやめてます、あの人は」。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2002年11月28日 12:00

更新: 2003年02月07日 15:15

ソース: 『bounce』 238号(2002/11/25)

文/川村 恭子