インタビュー

ザ・ハイロウズ(2)

ヒロトの側にある音楽の悦びの数々


録音は日本。ミックスダウンをロンドンのアビーロード・スタジオで。そしてマスタリングをポートランドでやっている。ロンドンからポートランドに行くためにはニューヨークに寄るので、前後に少し自由な時間を作っている。彼らはこのところのアルバムをこのスタイルでずっとやっている。

「ポートランド行ったのはオレとマーシーだけで、おーちゃん(大島賢治)と調(先人)くんはロンドンからパリへ行って、その後イタリアへ行ってたんだよ」。

どうも話をよく聞いてみると、ヒロトはNBA(バスケット)派、大島くんと調くんはサッカー派なのだ。つまり2人はどうやらセリエAを観戦にということだったよう。

「なんかね、中村俊輔も中田英寿も観れたって言ってた。観に行った試合で得点したんだよーって言ってた(笑)」。


そういうヒロトは何をしていたのか、といったらニューヨークでは2回、ローリング・ストーンズのステージを観たというし、ポートランドからの帰りにはボストンに寄り道。ブルース・スプリングスティーンのステージを観ている。

「ボストンだけさ、ピーター・ウルフが飛び入りしたんだよ!! すっげぇ、カッコよかった」。

ピーター・ウルフは元Jガイルズ・バンドのヴォーカリストだ。現在はソロで活動しているが、今年リリースされたアルバム『Sleepless』は彼の傑作のひとつかもしれないというヒロトは、あんまりにも日本に来る気配がないから、自分たちで呼んでしまおうか……そう考えていたぐらいのピーター・ウルフ好き。だからこの飛び入りは今まで観たなかでも極上のコンサートになったらしい。

ロンドンではラバーソウルを買う。ミンクス・クラブという小さなライヴハウスでレックレス・エリック(80年代のパブ・ロック系パンク・ロッカー)を観る。アメリカではストーンズのコンサート会場でTシャツを買ったり、街ではストーンズのアルバムのリイシューのジャケット違いのものを買いに走る。


「オレ、バカだからさぁ(笑)。日本盤のリイシューにコメント書いてるんだよね。だから見本盤がひょっとすると来るのかなーとか思いながら……でも待ちきれなくてさぁ。しかも(リイシューされた)22枚、1軒で全部揃わなくって、CD屋ハシゴしてるんだよ(笑)」。

移動の電車や乗り物では音楽雑誌を読んでいる。こんなオモシロイ記事あったよ、と嬉しそうに話す。いつでもヒロトの側には音楽がある。音楽の悦びがそこかしこにつまっている。余計な理屈なんかない。実に、ハイロウズは全員、こんな感じだ。そんなふうにアルバムの向こうにはいつでも悦びがあふれているから、なんだか自分もロックしたくなる気持ちにさせてくれる。それがハイロウズなんだ。

これまでにリリースされたザ・ハイロウズのミニ・アルバムを紹介

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2002年11月28日 12:00

更新: 2003年02月07日 15:15

ソース: 『bounce』 238号(2002/11/25)

文/川村 恭子