ヒロトが辿り続けたロックンロールの現場、その興奮の轍
〈(前略)だまされてもかまわない。いっそこのまま、だましとおしてほしい。これって、やっぱり恋かしら〉。ヒロトは先頃初CD化されたローリング・ストーンズの、デモテープやアウトテイクなどから構成された『Metamorphosis』に寄せてそう書いたけど、ロックに恋した少年はいつまでも熱病に浮かされたままだ。Eストリート・バンドを率いたブルース・スプリングスティーンのライヴでは、帰ってきたギタリスト、マイアミ・スティーヴとのスリリングな絡みを目の前に。初期の勢いを取り戻したかのようなアメリカン・ロックに声を荒げるヒロト。そのライヴに飛び入りしたピーター・ウルフは、ストーンズに負けずと劣らないセクシーなアンサンブルを聴かせたJガイルズ・バンドのフロントマンだったが、そのブラック・ミュージックに根ざしたヴォーカルの魅力はソロでも不変。UKオリジナル・ジャケ仕様にてリイシューされたザ・フーの『My Generetion』についても嬉しそうに語る(きっと89年に目撃したという彼らの貴重なライヴについても!)。そしてザ・ハイロウズの凄さを多くの人に再認識させたフジロック公演後に観たレッド・ホット・チリ・ペッパーズのステージでは、ジョン・フルシャンテを含めた、バンドの圧倒的な〈出音〉がヒロトを驚嘆させたという。
もちろん日本でもヒロトはそんな出会いの興奮を感じている。かつてイヴェントで共演したDragon Ashのライヴにいたく感銘を受けたというのは有名な話だが、最近ではおなじくイヴェントで顔を合わせたLOVE PSYCHEDELICOのライヴに同様のロックするDNAの連鎖を感じたよう(ちなみにマーシーもデリコの音楽を聴いていたそう)。打ち上げにも参加したという彼らとデリコの2人がどんな会話を交わしたのか? 想像するだけでワクワクする。中学生のときにマンフレッド・マンやセックス・ピストルズに頭を撃ち抜かれた少年は、ロックンロールへの旅を始めた。それは永遠に終わることはない。
文中に登場したアーティストの作品を紹介
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カテゴリ : インタビューファイル
掲載: 2002年11月28日 12:00
更新: 2003年02月07日 15:15
ソース: 『bounce』 238号(2002/11/25)
文/内田 暁男