インタビュー

餓鬼レンジャー(2)

何も言ってないようで何か言ってて……

「実際、オレらはホントにエロいからねえ(笑)」(Yoshi)。

「オレは結構マジメだったと思うんだけど……ウチのMC2人に眼を開かせてもらいましたね。オ○ニーは全然恥ずかしくない行為なんだって」(G.P)。

「いや、オ○ニーはむしろ胸張って誇るべき行為だよ。男も女も」(Yoshi)。

 いかんいかん、ちょっと待った。この人たち、話がエロ方向に向くと暴走機関車と化してしまうんで、いったん話を仕切り直そう(エロに関してはコラムを参照)……さて、怪作『DA-PONG』はどのようにして完成したんだろうか?

「制作期間は3か月くらい。約8割は地元(福岡。ちなみに餓鬼レンジャーの結成は熊本だが、DJの2人が福岡在住だったこともあり、現在はMCの2人も福岡在住)でレコーディングした。3曲録って1週間空いて……とかそういう感じだったな。閃いたモノをそのままパッと封じ込めるっていう手法だから、集中してやったほうがいいんだ。実際の曲作りは全部トラック先行。MC2人のツボはそれぞれ微妙に違うんだけど、オレらはそれも良くわかったうえでトラックを作れるようになってきてるから、今回は『UPPER JAM』以上にタイトなアルバムに仕上がってると思う」(DJ HIGH SWICH)。

「曲が多くなるコトは想定してたな。パーティー・チューンが多くなるのも、まとまりのない、いい意味でゴチャマゼな感じになるのも予想してた(笑)。けど、全体として餓鬼レンジャーらしさが出てればいいかな、と。オレ自身はDJだし、もちろんメイン・ストリームのヒップホップも好きだけど、やっぱいちばん好きなのは土臭いのだったりして。最近ならジュラシック5とか。そういう感覚とかも自然に出てると思う」(G.P)。

「曲の中でも〈体臭ならあったほうがいい〉って言ってるんだけど、そんな感じだな。頭で考えて作り込むんじゃなくて、自然に臭ってきちゃう(笑)。曲を作り始めるときなんて、自分たちでも見えないでやってるところがあるから。完全に見切り発車(笑)。プリプロとかも一切ないし。当然、スタジオでもリリック書くし」(Pocyomkin)。

「オレもスタジオ行ってトラック聴いてから〈15分ください〉って言って(笑)。もちろん、時間がかかってる曲もあるんだけど。“MONKEY 4”は2か月かかったし。でも、“円”なんてホント15分で書いた。さすがに金の話になると早かったな(笑)」(Yoshi)。

 そう言えば、その“円”に限らず、今回のアルバムでは金に関するリリックが多い。

「もともとそういうのがあったワケじゃないんだけど、アルバムを作ってくうちにグチっぽい話がドンドン出てきて、お金の話のウェイトが増えていった(笑)」(Yoshi)。

「オレらの心の叫びですよ(笑)。別に無闇やたらに欲しいって言ってるんじゃなく、自分らのやってるコトに比例して金がもらえてるかと言うと……。車も持ってないし」(DJ HIGH SWITCH)。

「結構、儲かってるでしょ?っていう目で見られることが多いんで。実際は儲かってないし。儲かってたらそういう歌になると思うんだけど。どこかで誰かが甘い汁~♪(爆笑)」(Pocyomkin)。

「“円”の最後のところでボソボソ言ってるセリフがあるんだけど、アソコが今回のアルバムを通して最大のパンチラインだね(笑)」(Yoshi)。

「アソコはオレの友達が言ってるんだけど……いや、オレです!(爆笑)」(DJ HIGH SWITCH)。

 それにしても、餓鬼レンジャーの音楽が描き出す風景、その振り幅の広さは尋常じゃない。たとえば、AGENT ORANGE & Pocyomkinによる、どーしよーもなさ爆裂の“HOT SPOT”とYoshi & 海 & DISRUGRATによる心染みる“風詩”。この2曲がアルバムで普通に同居してしまうことの普通じゃなさ。これは2人のMCがお互いの個性を最大限に理解し、リスペクトし合ってる証拠以外の何物でもないだろう。

「オレは完璧主義者だから、どーしよーもない感じとかも含めて、こういう感じがいいなと思ってやってるんだよね。響きだけ、みたいに思われることも多いのかもしれないけど、言葉は凄く大切にしてる」(Pocyomkin)。

「シン(Pocyomkin)は何も言ってないようで何か言ってて、でもやっぱ何も言ってないようで何か言ってる(笑)。2人で曲のテーマとかについて話すときとかも、すごく深い部分で共感できるんだ」(Yoshi)。

 エゴ&エロ――人間の地核部分で強力に繋がったMONKEY 4=餓鬼レンジャーのニュー・アルバム『DA-PONG』を聴け! そして感じろ!

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2002年12月05日 15:00

更新: 2003年02月07日 15:10

ソース: 『bounce』 238号(2002/11/25)

文/萩谷雄一