インタビュー

ゆらゆら帝国

昂揚、不気味、叙情、オシャレ、ウレシ、タノシ、ハズカシ……。こらえきれんばかりに吹き出た――ゆらゆら帝国の音楽が抱える――モロモロが、どっと2枚分。近づく前から匂い立つ、濃い~ニュー・アルバムを発射!


「あれはもう、曲が出来た瞬間からひょっとこが頭にあったんですけどね。それがまた、歌詞とすごい合ってるというか……サビの〈3分間の この曲が/最先端の 君の感性を/3分間で 錆びつかせる〉っていう歌詞と、あのひょっとこの動きがピシャリとハマってて(ニヤリ)」。

かようにゆらゆら帝国の中心人物、坂本慎太郎(以下同)が語るのは、ニュー・アルバム収録曲“夜行性の生き物3匹”のプロモ・クリップ(下部参照)に関して。ひょっとこ面を装着した3人の阿波ダンサーがプロフェッショナルに延々踊る(だけ)……というこの映像は、〈ヘヴィなブルース・ロック・ナンバー〉ってな曲に対する印象が見事に粉砕されてしまう、それはそれは破壊力バツグンのシロモノ。かっこいい/悪い、新しい/古い、オシャレ/ダサイ……などなど、モロモロの価値判断基準がカオティックにシェイクされることは必至なのです――と、この件が象徴的なように、『ゆらゆら帝国のしびれ』『ゆらゆら帝国のめまい』とそれぞれ題され同時リリースされる2枚のアルバムは、ゆらゆら帝国という音楽制作集団の多義的な音楽観・世界観がヒッ……ジョーによくわかる作品なのです。それゆえ、まったく別の2枚が必要だったわけですが。生理的に不快な音像やら不安を誘うテンポ感やらが躊躇なく盛り込まれてやたらとヴァラエティー豊かな『ゆらゆら帝国のしびれ』、叙景的かつ情緒的な言葉やメロディーがオーソドックスかつ感動的(ある意味)に奏でられる『ゆらゆら帝国のめまい』――この2枚が。

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掲載: 2003年03月06日 12:00

更新: 2003年03月27日 15:54

ソース: 『bounce』 240号(2003/2/25)

文/フミ・ヤマウチ