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インタビュー

ゆらゆら帝国(3)

基本的にはね、直球なんですけどね

ここまでくれば、もうおわかりでしょうか。ゆらゆら帝国という音楽制作集団のモチベーションは〈自分で聴きたい音楽を自分で作る〉という、実にシンプルなものなのではありませんか。

「もうバリバリそれのみ!って感じで。ホントは子供のヴォーカル(〈めまい〉収録の“ボタンが一つ”。歌うは、本作エンジニア氏の娘)も、べつにCD化されなくてもいいから、とりあえず録って、家で聴く用に持って帰りたかったくらいで。本当は、〈めまい〉のほうは全部他人に歌ってもらっても良かったぐらいの勢いだったんですけどね。この子供ヴォーカルは、実際にアルバム出る前に誰かに先越されそうで、まだドキドキしてるんですよ。でも、子供がいてそういうことやりそうなミュージシャンは、自分の子供がまだ赤ちゃんだったりしますもんね、まだ歌えないでしょ(ニヤリ)……曽我部(恵一)くんとか、小山田(圭吾)くんとか」。

とはいえ、ゆらゆら帝国の音楽が単なる自己満足の世界にとどまらずに、多くのリスナーはもちろん、ミュージシャンにも衝撃を与え続けているのはみなさんご承知のとおり。さまざまな解釈や印象が許される多角的で懐深い音楽でありながらも、いわゆる〈ひねくれ〉ともアンチとも無縁に、シンプルかつダイナミックな構造のゆらゆら帝国サウンドは、実に説得力に満ちたそれこそオンリーワンな存在感を誇っておりますがな。

「基本的にはね、直球なんですけどね……ホントに自分で感動しちゃうヤツを作るっていう」。

直球、されど魔球。もはやクダラナサとウツクシサの間の、ほっ……そ~い塀の上をスタスタと進むゆらゆら帝国という音楽に拮抗しうるメディアは、受け取る側のイマジネーションや解釈や時間を限定しない、かつ権威主義に陥らないのが美徳である、という点で〈マンガ〉しかないとさえ思います。しかし、彼らはかつて歌っていたではありませんか。マンガの世界もラクじゃないぜ――と。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2003年03月06日 12:00

更新: 2003年03月27日 15:54

ソース: 『bounce』 240号(2003/2/25)

文/フミ・ヤマウチ