『Eye Candy』にみるUKビートの現在
『Eye Candy』がこれだけカッコイイ理由は、楽曲の粒がさらに揃い(アホみたいな理由だけど)、UKならではの黒いグルーヴを突き詰めている点にある。前作『Lickin' On Both Sides』と比較してまず気付くのは、“Roll On”で好相性を見せたブラックスミスや重鎮フル・クルーも不在でクリエイターが世代交代していることだろう(同時にアイドル風ポップスを手掛けていたメンツも消えた)。今回の軸になっている制作陣は、前作に続くエド・ケイス(アトランタ・ベース風の2ステップ“Dance Your Cares Away”を提供)、ノルウェーのスターゲイト(US志向のバウンシーなR&B“Scandalous”を)、ソー・ソリッド・クルーのJD(ゴリゴリのヒップホップ・トラックの“Nitro”を)、さらにはUKソウル新世代のリシ・リッチやマッシュタック(ダンスホール曲まで!)も登場し、いずれも幅広い解釈が可能なオリジナルでドス黒い楽曲を用意している。クレイグ・デヴィッドが『Slicker Than Your Average』で意図したように、UK産のサウンドでアルバムの要所を固めたいという思いがミスティークにもあったのだろう──それも昔の名前じゃなく、若い才能たちで。極端に保守的な音楽で賑わっているように思えるいまのUKだが、彼らのような連中がきっと新しいことをやらかしてくれるはずだ。
▼文中に登場したクリエイターたちの作品を紹介。
スターゲイト“Easier Said Than Done”(Telstar)
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