『Think Tank』の成分を3つのベクトルで分析すれば………
*デーモンのソロ・ワーク*
バンドの活動休止中、もっとも精力的な課外活動をみせたのがデーモン。奇才ダン・ジ・オートメイターらとのユニット、ゴリラズでは、ひとつのスタイルにこだわらない自由な発想で、本体ではあまり感じることのできなかった遊び心満点の作品を発表したが、新作におけるヴァリエーション豊かなビートや色とりどりのノイズ、エフェクトは、まさにゴリラズ譲りの奔放さ。またデーモンは、マリのミュージシャンとのコラボレートも実現させているが、先述したビートの多彩さ、随所でみせるダンサブルなテイストこそ、その影響の表れ。こうしてデーモンのさまざまな活動からのフィードバックが、新作をより自由度の高い作品にしている。
*モロッコ音楽からの影響*
これまでに多くのミュージシャンが魅了されてきたアフリカ、モロッコの音楽。古くはローリング・ストーンズのブライアン・ジョーンズが、近年ではタルヴィン・シンが魅せられて、地元の楽団をプロデュースしてきた。そして今回新たにその列に加わるブラーは、モロッコはマラケシュでのレコーディングを敢行し、地元のミュージシャンとも共演。アルバムをとおしてアフリカの広大な大地と真っ青な空にも通じるスケールのデカさ、すべてのものを軽々と飲み込んでしまう不思議なパワーが、これまでにないレベルで放出されている。
*参加プロデューサーたち*
前作『13』に続くウイリアム・オービット、そしてノーマン・クックをそれぞれ(一部ではあるが)、プロデューサーとして起用している点も今作の重要なポイント。まずオービットは“Sweet Song”で、その儚くも美しいメロディー・ラインを活かすべく、マドンナや自身の作品でみせたアンビエント・タッチの空間演出を披露し、より芸術性の高い楽曲へと昇華させた。一方のノーマンは、お得意のダンス・トラックではないが、ビューティフル・サウスとの仕事でみせたグルーヴィーなヴァイブを作品にもたらすことに貢献。決して派手な役回りではないがしっかりと回答を出す2人、2人を選んだブラーも鋭い!