インタビュー

Ginuwine(2)

いままで以上に俺らしいアルバム

 このように、当初ティンバランドの後ろ楯でデビューしたジニュワインは、作品を出すたびに人間的にも成長し、アーティストとしての階段を登ってきた。このたびリリースされた最新作『The Senior』について彼はこんなふうに解説している。

「このアルバムは俺の成長を表現したものなんだ。学校でも、1年生で入った時と4年生になった時では違う人間に成長しているだろう? 4枚目=4年生って感じで、いままで学んだことや成長してきたことを歌っている。いわば、若くて音楽の道に進んだばかりの頃の俺と、現在の俺とを対比するとでもいうか……いままで以上に俺らしいアルバムだな。現在、この時点での俺がわかってもらえるアルバムになったと思うよ」。

 今作では彼自身がほとんどすべての楽曲制作に関わり、ファンお待ちかねの官能的なスロウからストリート色が濃いナンバーまでさまざまな曲をとおして、リスナーが望む〈ジニュワインの世界〉を余すことなく伝えてくれている。

「スヌープのラップが自分の曲に入ってるなんて最高だね! 彼とはずっと前から共演してみたいと思っていたんだ」。

 そうも語るジニュワインは“Get Ready”でスヌープ・ドッグをフィーチャーするに留まらず、ウータン・クランのメソッド・マンと“Big Plans”で共演し、辛い時期を共に乗り越えた愛するソレイ(彼女との間にはストーリーちゃんという女の子をもうけている)を“Sex”に招いている。また、サントラ『Barber Shop』に収録されて全米R&Bチャートのトップ10に入った“Stingy”に続き、アルバムからのリード・シングルとなった“Hell Yeah”では、彼が以前から〈組んでみたいプロデューサー〉の筆頭に挙げていたR・ケリーとの合体が実現した。

「彼が俺と仕事をやろうと思ってくれただけで嬉しいよ。普通、男性ソロ・シンガーは別の男性ソロ・シンガーとは仕事をしたがらないものだしね。“Hell Yeah”は男女問わずクラブでガンガン踊ってもらえるアンセムだよ」。

 この最高に楽しいクラブ・チューンにはキャッシュ・マネーの創立者でありビッグ・タイマーズの片割れでもあるベイビー(いまの南部ギャングスタ・ラップ界でもっともホットな存在だろう)が登場し、そのリミックスではネプチューンズの後押しで勢いに乗るクリプスが援護射撃をかます。そんな“Hell Yeah”の出来に大満足のジニュワインとケリーは、今度はスロウ・バラードを作る計画をしているとか。これらの人選は単に豪華なだけでなく、このアルバムに起用されたスコット・ストーチ、トロイ・オリヴァー、トロイ・テイラーなどのプロデューサーたちにもいえることだが、メインストリームの最先端を睨んだ実力者ばかり。高校の卒業アルバムの様相を呈した今作の主役ジニュワインは、その華を纏うのにふさわしいクラスの主席よろしく、堂々とソウルフルに愛を歌い、少しやんちゃにハメを外してもいる。

 こうして、未来に向かって晴れやかに歩み出したジニュワイン。彼は次作の構想を早くもこう語っている。

「ティンバランドたちとはいまでもファミリーだよ。本当は今回もティムと組むはずだったけど、彼のプロジェクトが終わらないうえに、俺のほうも待てない状況だったから、仕方なく今回は諦めたんだ。でも次のアルバムは『Back To The Basic』って名付けようと思っていて、ティムと2人でアルバムをすべて手掛けたい、と思ってるんだよ」。

▼『The Senior』に参加したアーティストの作品を紹介。

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掲載: 2003年05月01日 13:00

更新: 2003年05月01日 18:48

ソース: 『bounce』 242号(2003/4/25)

文/石島 春美