インタビュー

FIRE BALL(3)

起こったことを真空パックして出す

 そしてこの6月。彼らはセカンド・アルバム『BOOK OF LIFE ~炎の章~』をリリースする。〈炎の章〉と副題のついたこのアルバムは、ソロの集まりから発したFIRE BALLという集合体が最初に掲げた〈4人でひとつ〉というコンセプトを明確に押し進めた彼らの第2章であるとともに、前作から大きく幅を広げた印象がある。“KICK UP”のようなダンスホールの現場賛歌はそのままに、力こそが正義と言わんばかりの世界の姿に「個人レヴェルで(意見を)訴えた」(JUN 4 SHOT)“平和依存”などがあったりと、アルバムの随所に決して明るくない現実が影を落としているが、同時にこの作品は音楽的にもダンスホールで機能するものだけに留まっていない。現実を映した楽曲のひとつとしては、「同じ横浜だし普通にいっしょにやりたかった」ということで決まったMACCHO(OZROSAURUS)と「ライヴで観たら突き刺さってきた」というDELIをダブル・フィーチャーした“SAFE NO MORE”も挙げられるだろう。

 MIGHTY CROWNとともに常にダンスの現場を見据えて活動してきた彼らにとって、「帰るべき場所、いるべき場所はダンスホールだし、来たところもダンスホール」(CHOZEN LEE)――今回のアルバムはそんな気持ちで当初、
「ダンスホールに帰ってそういう曲をたくさん作るつもりだった」(CHOZEN LEE)というが、周りの現実がそうさせなかったという。

「背景にいろんなことが起こってて、それを無視できなくなった。暗いことも多いし、自分の人生のなかでかなりの一大事がいろいろ起きてるから」(CHOZEN LEE)。

「普通に〈これ〉を続けてほしくないってこともあったり、前向きに考えてそれをより良くするにはどうしたらいいんだろうってことを自然に考えてしまう。なんで(このアルバムが)こんなに暗いのかっていったら、作った時期が暗かったわけで。それを同じ歴史として残せたっていう満足感はありますね」(JUN 4 SHOT)。

「瞬間瞬間で起こったことを真空パックして出す」(JUN 4 SHOT)彼らの音楽は、次のアルバムで今作とまた違う顔を見せるかもしれない。ただ、〈4人でひとつ〉をよりディープに展開した今作は、〈才能豊かな集まり〉が足し算以上の何かを生む、さらなるきっかけのひとつになることは間違いないだろう。

▼『BOOK OF LIFE ~炎の章~』に参加したアーティストの作品を紹介。

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掲載: 2003年07月03日 11:00

更新: 2003年07月31日 18:46

ソース: 『bounce』 244号(2003/6/25)

文/一ノ木 裕之