BACK DROP BOMB(2)
ノってるから大丈夫でしょ
「レコーディングは、曲作りの段階から考えると2年とかそれくらい? 結構かかってますからね。その間の変遷については……自分の2年を振り返ってごらんなさい、って感じですよ(笑)」(白川貴善、ヴォーカル)。
大ヒットを記録した前作『micromaximum』は、いわばリスナーが彼らを捕まえた……はずの一枚であるが、そこからの彼らは2001年8月の『2254 UNIVERSAL EP』や、あり得ない面子が一同に介した2002年5月のリミックス・アルバム『REFIXX』という手掛かりを残しながら、わずかなところで追っ手をかわしてきた。どうやら、走りのフォームは基本的に変わってはいないようだが、3年半あまりという年月は彼らに知恵と、さらなるスピードを授けたようだ。
「ドラムの録り音に関しては、メンバーに〈サンレコ〉寄りの厳しいヤツが一人いて(笑)、それは……ベース(篭橋俊樹)なんですけど、そいつとエンジニアが中心になってやっていて。で、ギター(田中仁)は本番でどんどん変わっていくタイプなんで、まず、ドラムとベースをカチッと決めてからレコーディングに入って、そこからはシビア……っていうより実験だったって感じですね」(小島真史、ヴォーカル)。
そもそも、彼らのフォームとはどんなものなのか。ここでおさらいしておこう。
「1曲のなかでのリズム・パターンをベーシストが作ってくることも多くて、それをドラマー(有松益男)が叩いて近づけてくっていう。そういうやり方もしているので、そのあたりはTSUTCHIEとツネくん(恒岡章)のやり方といっしょですよね」(白川)。
限りなく〈トラックメイク〉に近い彼らのフォームとは、つまり、走りながら道を作っていくようなものだ。
「最近、そのへんはエスカレートしてる感がありますね(笑)。例えば僕が、自分で作ったメロディーを聴いて〈これ、なんかおかしいな?〉と思って、その曲の8小節を聴いてみると、最初はレゲエの音の取り方から入って、それが3小節に行くか行かないかぐらいでR&Bのフェイクのアゲになって、終わりは素で戻ってて(笑)、〈あ、ここだったんだ〉って気が付いたり。非常に気持ちが悪いというか、より自分のクセがはっきりしてきたというか。それはバンド外のほかの人と作業してるときに気付いたりするんですけど、それは……もうしょうがない(笑)」(白川)。
その作業は巧妙になったとはいえ、あえてクネクネとした道を走らずに、一直線の道を走ったほうが気持ちいいのではないか?
「でも、逆に〈1曲目でパンク、2曲目でハウス、3曲目でボッサ行きましょう〉みたいなことをやってもおもしろくないじゃないですか。むしろ、ほかのメンバーが弾くヘンなフレーズの上で、こっちもヘンなことをやるほうがアガっちゃったりして。例えば、ハウスのリスナーがいわゆるハウスだけを求めてるならブレイズだけ聴いていればいいと思うんですけど、そうだとしたら、いまのハウスの世界はないですもんね。それはロックとかもいっしょなんじゃないですか? レッド・ツェッペリンだって、当時キダタローが怒ったくらいだから、出てきたときは気持ち悪かったんだろうと思うし(笑)、気付いたら、いつの間にかにトラディショナルなバンドになってたわけじゃないですか」(白川)。
歴史はかく語りき。多くの先駆者もそうして積極的に道を外れ、結果的に新たな道を開拓してきたのだ。本作に限って言えば、より硬度を増したメタリックなギターがバッタバッタと目の前の障害物をなぎ倒してゆく。
「ヘンな方向に行っちゃってても、ノってるから大丈夫でしょ、みたいな。まあ、相手のやってることがよくわかんなくて、ノったつもりでやることもあるんですよ(笑)。そこは思い込みが大事だし、自分が満たされない部分があるんだったら、また新しく満たされる部分を探すって感じですね。そんなもん、どこにでもあるから。それに、間違ってもいいんじゃないですか? レゲエだって、基本的には間違って出来た音楽じゃないですか。それに、間違っているようで間違ってないかもしれないし」(白川)。
「ニューウェイヴなんか、まさにそういうところから始まってますよね。ポップ・グループなんか、初めはファンク・バンドをやりたかったのに、気が付いたらダブが混じって、どんどん違うものになって……でも、それをカッコイイと思う人が出てくるっていう。それに近いと言えば近いですよね」(小島)。
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