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インタビュー

Mary J. Blige

新たなステージにて原点回帰を果たしたメアリーJ・ブライジ。そんな女王のお言葉を最速でお届けするぞ!!

〈不幸なメアリー〉との訣別


「デビュー・アルバムの『What's The 411?』は文字どおり〈information〉(案内)として機能する作品ね。『My Life』は〈misery〉(みじめ)で〈pain〉(苦悩)……あれは地獄のような苦しみのアルバムよ。『Share My World』は〈confusion〉(混乱)。『Mary』は〈trial and error〉(試行錯誤)。『No More Drama』は自分自身に対しての〈anger〉(怒り)ね」。

 メアリーJ・ブライジ――パーソナルな痛みを歌に託してきた、90年代以降もっとも重要なR&Bシンガーは、みずからにネガティヴなイメージが付きまとっていることをあっさりと認めている。そして、そんな〈不幸なメアリー〉が自分の魅力の一端を担っていることも、彼女は重々承知している。

「確かに、私が不幸であることを願っている人も多いはず。でも、ファンが私の苦しみを聴きたいから、なんて理由ではもうやってられないわ。いま、こうして私がハッピーになったから嫌だというのであればそれで結構よ。幸せな時は幸せな曲を歌うだけ。思ったとおり突き進むだけよ」。

〈不幸なメアリー〉との訣別。ニュー・アルバム『Love & Life』には、悟り澄ましたようなタイトルからもあきらかなとおり、最近になって婚約した彼女の穏やかな精神状態が反映されている。

「婚約して凄く幸せだし、その心境は作品にも反映されてると思う。いまの私にとっての答えは〈Love〉と〈Life〉。人が愛してくれるのを待つんじゃなくて、まず自分自身を愛するってことよ」。

 愛の喜びを表現するにあたってメアリーが選んだステージは、本人の言葉を借りると「『What's The 411?』の2003年ヴァージョン」。さらにその演出を手掛けるパートナーとしては、メアリーのデビューに際して〈Queen of Hip Hop Soul〉なるコンセプトを掲げたP・ディディに白羽の矢が立てられた。彼との本格的なコラボレートはセカンド・アルバムの『My Life』以来、9年ぶりになる。

「私のファンの多くは『What's The 411?』や『My Life』を聴いて好きになってくれた人たちなの。そういうファンのために今回はパフィ(P・ディディ)ともう一度組もうって決めたのよ」。

『My Life』が「地獄のような苦しみ」と形容される背景にP・ディディとの確執が影を落としていることは、メアリーの歩みを追ってきた者であれば誰もが知るところだろう。修復不可能と思われた両者の関係が和解へと向かった経緯にも、メアリーの達観した視点を垣間見ることができる。

「本物の愛は決して絶えることはないってこと。私たちが疎遠になっていったのは、お互いが成長するために必要なことだったのね。もちろん、あの当時はそうは思わなかったし、こうしてまたいっしょにやる日が訪れるなんて想像もしてなかったわよ。私もパフィも許すことを学ばなくちゃいけなかったんだと思う。過去にこだわってばかりいないで、先に向かって進んでいかないとね」。

▼メアリーJ・ブライジのオリジナル・アルバム。一枚でも逃してたらマストで予習しとくのよ!

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2003年08月14日 12:00

更新: 2003年08月28日 19:15

ソース: 『bounce』 245号(2003/7/25)

文/高橋 芳朗