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インタビュー

ネタは世につれ、世はネタにつれ……メアリーの新作に象徴されるサンプリング元の変化 その1

 P・ディディとメアリーのコラボ……その再会を表明するプロモーションに用いられたのが、50セント“In Da Club”ネタの“Hooked”(正規リリースはナシ)だった。これは特別な例ではあるものの、最近では(右に示しているとおり)ネタ元がリサイクルされるまでの期間がどんどん短くなってきていて、改めてこのジャンルのサイクルがいかに早いかを思い知らされる。
 一方、それとは別に、90年代前半~中盤に生まれたNYヒップホップのヴァイブを取り込もうとする動きもあるようで、メアリーは新作からの先行シングル“Love @ 1st Sight”でトライブ・コールド・クエスト(ATCQ)の“Hot Sex”をネタにし、右上のコラムで紹介しているサントラ『Bad Boy II』には、これまたATCQの“Find A Way”を用いた“Didn't Mean”を提供……とATCQ(再結成も発表されたばかり!)祭りの様相だ。これをきっかけにニュー・スクール以降のネタ使用が定着していけば、メアリー×ディディはまたもその先駆者として記憶されることになるのだろう。

▼関連盤を紹介。

DR. DRE What's The Difference? (1999) エミネムとイグジビットがまくし立てる『2001』屈指のワビサビ・ループを、ブルー・カントレルは“Breath-e”で大胆にネタ使い。客演者ショーン・ポールの人気も相まって現在大ヒットを記録中。と同時に、耐久度も汎用性も高いドクター・ドレーのトラックに改めて感服しました。

CAM'RON Oh Boy (2002) メアリーもカヴァーしたローズ・ロイス“I'm Going Down”の回転数を早めてループしたキュートでキャッチーなキャムロンの名曲“Oh Boy”を、その数か月後にネタ使いしたのがマライア・キャリー“Boy(I Need You)”。共にジャスト・ブレイズがプロデュース。抜け目ないですな。

THE NOTORIOUS B.I.G. Ten Crack Commandments (1997) 印象的なカウントで始まるビギーのクラシック。ループはDJプレミア作で、SWV“Someone”で用いられたことでも歌モノとの相性の良さは証明済みのネタだが、リル・モーはプレミア本人にプロデュースを仰いで“Ten Comma-ndments”として再生。

BIG PUNISHER Still Not A Player (1998) 故ビッグ・パンがジョー“Don't Wanna Be A Player”を引用して作り上げた大ヒット曲を、今度はラテンの歌姫タリアが勝負曲“I Want You”で三次使用。アルバムのジャケも(パンと仲の良かった)J-Lo狙い……ってことで、ネタ元の背景も活かした上手いリサイクル例。抜け目ないですな。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2003年08月14日 12:00

更新: 2003年08月28日 19:15

ソース: 『bounce』 245号(2003/7/25)

文/出嶌 孝次

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