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インタビュー

BHANGRA2003!!

突如世界のモードに浮上したバングラ・ビートに注目!!

bounce.comオリジナル、パンジャビMC直撃インタビュー! 


 
“Mundian To Bach Ke”の大ヒットで世界中のBボーイズをカレー色に染めているパンジャビMCの最新インタヴュー、誌上には間に合わなかったがウェブ上でスクープしよう。なんせ94年の来日時以来9年ぶり“Mundian To Bach Ke”以降初の日本語インタヴュー記事なんだ。

そもそも“Mundian To Bach Ke”は98年のアルバム『Legalisesd』に収録された旧曲。それがなぜ今になってヒットしたのだろう。

「今、音楽市場はグローバル化しているし、いろんな種類の音楽が前より受け入れられるようになってきたからじゃないかな」。

 バングラ・ビートこそ次世代のヒップホップだ!とかデカイこと言ってくれるのかと思ったら随分と気のない返事。仕掛けたというより、時代に求められたということか。

 バングラ・ビートは日本では10年ほど前にワールド・ミュージック周辺で一大ブームになり、パンジャビMCも来日公演を行っている。だが、その後はCDの流通が途切れたため、そのまま廃れてしまった音楽のように扱われていた。それが今回の予想外の大ヒット。これは米英のヒップホップ・ポッセたちが、ティンバランドもビックリの阿波踊り的変則ビートに新しさを感じたからであって、ワールド・ミュージック・ファンからの動きではない。バングラ・ビートは水面下で増殖し続けていたということだろう。

「すごく伸び続けているね。特にヨーロッパで。サハラのような新しいアーティストも出てきているし、アチャナークみたいな古くからの人気グループが今も伸び続けてるしね」。

 では、そんなシーンのなかでパンジャビMCはどう変わってきたのか。

「いや、僕は変わってないよ。今でもヒップホップと伝統的なアジアのメロディーをいっしょにミックスして使ってるし」。

 それでも以前のよりヒップホップ色の強かった作品と比べて、最近の彼の作品はより伝統的なバングラに立ち返っている。もちろんビートはよりドープに深化&特化しているが。

「僕の曲はほとんどがダンス・フロアで生まれるんだけど、グルダース・マン(インド本国のバングラを代表する歌手)らの古い曲を使ったりして、よりヴァラエティーに富むようにしているんだ。DJの時もヒップホップだけじゃなく伝統的な曲をかける方が多くなってきてるかな」。

 bounce編集部大石さんとのバングラ対談でも書いたが、初期の作品がヒップホップ色が強かったのは、UK生まれ&育ちの彼には当時のバングラよりヒップホップのほうがクールに映ったからかもしれない。それが長年続けていくうちに自分のルーツを再発見したということだろうか。

――バングラ・ビートはあなたにとってどんな音楽ですか。

「トゥンビ(〈チャンカ、チャンカ〉と鳴ってる一弦楽器)やドール(両面樽型太鼓)が入っていればみんなバングラさ」。

――ではヒップホップは。

「ソウルフルな音楽。ブラック・アンダーグランドにおける最高なモノをメインストリームへと持っていけるものだと思う」。

――では、あなたは自分自身をイギリス人だと思いますか、それともインド人だと思いますか。

「イギリス系アジア人。僕の文化や音楽はインド文化から来ているから、インド人という意識が強いかな」。
 
 彼に続くバングラ・ビートのヒット曲が出るのかとか、単なる一発屋なんじゃないかとか揶揄するのは簡単だが、今までの音楽業界の常識を彼がひとつ覆したことは確かだ。それは、パンジャビ語の歌とバングラ・ビートでもヒップホップとして全世界に通用した!ということだ。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2003年08月14日 16:00

更新: 2003年09月04日 19:50

ソース: 『bounce』 245号(2003/7/25)

文/サラーム海上