インタビュー

NYアンダーグラウンド・ロック20年史

〈トガってなんぼ〉という標語を掲げ、NYのアンダーグラウンド・ロックは流転してきた。ジャズやフォークが主流だったいにしえの時代から、インテリジェンスな人種が彼の地の音楽を支えてきたわけで、それはパンクの時代に多く存在したようなハジけた連中の音からも、変わらない同種の匂いを感じ取ることができる。街の坩堝的性質を体現するミュージシャンやバンドが次から次へと出現するのは、NYという磁場の強さに他ならない。NYに踏み入った者は誰しも、街が発する電磁波を受けて魅惑的な痺れを体験する。そんな感電者たちの歴史を少しだけご紹介。


VARIOUS ARTISTS
『No New York』 Island(1978)
ダウンタウンの街角や屋根裏部屋や地下室から、パンク、ヒップホップ、アングラ・ジャズが漂いはじめた時期に生まれた〈ノー・ウェイヴ〉という名の毒ガスの記録。

TALKING HEADS
『Remain In Light』 Sire(1980)
NYニューウェイヴの結晶。ブライアン・イーノの力を借りて作ったシャープなリズム・トラックの上を、神経質そうな爬虫類声が這いまくるいびつなエスノ・ファンク。

SONIC YOUTH
『Daydream Nation』 Blast First(1988)
インディー人脈がUSメジャーに影響を及ぼしはじめた時期にリリースされた彼らのインディー最後の大作。ノイズにまみれた世界像は、やがて来るグランジの呼び水となる。

LOU REED
『New York』 Sire(1989)
常に変わらず、すえた匂いのするNYのストリートについて歌い続けてきたルー・リードが、あえてテーマを絞り込んで書き上げた裏街道絵巻。本作以降、充実期が継続中。

JON SPENCER BLUES EXPLOSION
『Orange』 Matador(1994)
暗黒大王プッシー・ガロアのジョン・スペンサーが組んだポンコツ・ブルース楽団の傑作。激烈なスピードで激辛なノイズを吐き出しながら転げまくる血みどろロック作。


SOUL COUGHING
『Ruby Vroom』 Slash/Warner Bros.(1994)
ヒップホップとロックとニューウェイヴのうららかな融合。どんなに肩ひじ張ってみても、どこかトボケてしまう彼らの体質を、そのまま表現したオルタナティヴなデビュー作。

CIBO MATTO
『Viva! La Woman』 Warner Bros.(1996)
NYという異国の地で出会った日本人女子2人が生み出した、真に異形なロック作。過去も未来もぜんぜん気にせず、自由闊達に書き上げたイマジネイティヴなロック・マップ。

SEAN LENNON
『Into The Sun』 Grand Royal(1998)
コスモポリタンな彼が、幼い頃に耳にしていたポップとは、ぜんぜん異なるポップとノイズが交錯する先鋭的な音楽をクリエイトした。NYアングラ人脈もバックアップ。

THE DYLAN GROUP
『Ur-Klang Search』 Bubble Core(2000)
音響シーンから出てきた彼らだが、ラテンをやったり現代音楽をやったりと、一か所に収まることを避けるような活動を展開。これはオーブの生演奏カヴァー入り作品。

THE STROKES
『Is This It』 RCA(2001)
ロックンロールをまっすぐに放る、頼もしき逸材による〈グラウンド・ゼロ〉の年のデビュー作。伝統芸に陥る一歩手前で踏み留まり、ヒップな感性でうっちゃりをかます。

THE RAPTURE
『Echoes』 Mercury(2003)
NYを拠点とする彼らの満を持してのメジャー盤は、ハウス調やらニューウェイヴ調やらグラム調やらパンク調やら、さまざまなスタイルが渾然一体となったカオスな一発。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2003年10月30日 14:00

更新: 2003年11月20日 16:37

ソース: 『bounce』 248号(2003/10/25)

文/桑原 シロー