Jaylib(2)
俺たちのほうがクリエイティヴだ
この2人の偉大なプロデューサーの共通項となっているのは、サンプリングへのこだわりであり、だからこそ、バラバラな作業を経ながらも、アルバム全体には統一感がある。
「俺はいろんな音楽をチェックしていて、どんなジャンルのレコードからでもサンプリングするんだ。今回はほとんどをボスのSP303(通称:Drサンプラー)っていう玩具のようなサンプラーで作ったんだけど、つまり何を使うかが重要じゃなくて、どう使うかが重要ってことなんだよ」(マッドリブ)。
「いまのヒップホップの世界では、俺たちがやっているみたいなサンプリング・メインのプロダクションは軽視される傾向にあるんだ。それは音楽業界全体に関わる問題でもあるし、常にそういうことでレコード会社と戦っているよ。けど、絶対に俺たちのほうがクリエイティヴだと思うし、ふたたびこのスタイルが評価されると思うよ」(ディラ)。
必ずしも格好良いものが、多くの人の目に触れるわけではないという、この矛盾した世界だけど、その一方で、今回のプロジェクトをきっかけにディラがマッドリブのビートをバスタ・ライムズに聴かせたところ、バスタが気に入り、マッドリブのビートが次作に起用されるという。凄い!
そして、本作での成功で、ジェイリブというユニットは、次のステップに駒を進めることとなった。これも実に喜ばしいことだ。
「次作については、すでに話し合っているんだ。いろいろとアイデアはあるけども、まずはインストのコラボレーションを最初にやることになると思うよ」(ディラ)。
「今回はCDを送り合って、その上にヴォーカルを重ねただけだから、かなりロウ(生)な音質になったけど、インストはマルチ・トラックでやったり、まったく違う方法でやることになると思うね。ただ、間違いなくドープなものができると思うよ」(マッドリブ)。
う~ん、そちらも楽しみ。ディラは他にQ・ティップとのコラボレーションを予定していたり、マッドリブは元KMDのMFドゥームとのユニット、マッドヴィレインでのアルバム・リリースや、本作にも参加したNYの伝説的なMC=パーシーPとのコラボレーションもすでに制作済みとのこと。この2人が、これらの作品によって、どう化けていくのかが、実に楽しみであるし、彼らがアンダーグラウンドとオーヴァーグラウンドの間の壁を完全に崩してくれることを期待したい。
▼マッドリブ・ワークスの近作を一部紹介。