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インタビュー

The X-Ecutioners

処刑人は三度現れる。スクラッチで革命を遂行し、進化をもたらす──そんな題目から痛快無比な娯楽作品を生み出せるのはエクセキューショナーズだけだ!!


 早弾きギタリストの世界なんかといっしょで、どうにも〈信仰の現場〉チックな雰囲気のあるターンテーブリスト・シーンだが、その閉鎖感を叩き壊してくれたのがシーンを長く牽引してきたエクセキューショナーズだった。メジャー・デビュー作となった前作『Built From Scratch』からリンキン・パークのメンバーが参加した“It's Goin' Down”が大ヒットし、一躍クロスオーヴァーな人気を獲得した彼らが、2年ぶりに新作『Revolutions』を完成させた。気になるそのタイトルに込められた意味はというと……。

「まず、どのようにしてレコードが進化して、ヒップホップがいかに変遷を遂げてきたかということを示して、そろそろ変化/革命の時期じゃないかってことを込めたんだ。ずっと裏方だったDJが花形になれるっていうことをこのアルバムで証明したかったのさ」(ロック・レイダ)。

 それはすでに証明済みだと思っていたが、どうやら彼ら自身は満足しきっていなかったようだ。では前作との違いはどこにあるのか?

「決定的な違いは、ギター演奏の加工方法。“It's Goin' Down”ではマイク・シノダがギターを弾いたのをスクラッチしてフックにしたのに対し、今回はギターの生演奏をCDに焼いてコスッたりしてるんだけど、ただサンプルするだけじゃなくてその音にいろいろなエフェクトをかけて加工してる。フックだけじゃなく、曲全体に俺たちの個性が散りばめられてるのさ」(ロブ・スウィフト)。

その“It's Goin' Down”は、これまでの彼らのスタイルを覆す斬新なクロスオーヴァー・トラックだったが、今回もヘヴィー・ロック勢との共闘が用意されている。あのロブ・ゾンビが参加した“Even More Human And Human”がそれだ。

「ホワイト・ゾンビのリメイクをやろうっていうアイデアをトータル・エクリプスが出して、もし本人たちが興味あるんだったら、ぜひ参加してくれないかなって思ってね。“It's Goin' Down”の延長として、そういう路線の曲をやりたいと思ったし、あの曲だけで終わりにしたくなかったんだ。ただ、曲を聴いたらわかってもらえるはずだけど、“It's Goin' Down”とはまったく違って、もっとダークで挑発的さ。ロック系の曲ってのは、ギターにしてもどの楽器にしても元の音とは違った効果を生み出してて、俺たちがギターそのものになったような感じだね」(ロブ)。

 しかし、ロック勢とのコラボに正当な評価を下そうとしないメディアや偏執ファンがヒップホップ・シーンには多いと思うのだが。

「俺らはいろいろな音楽を聴いてるから、いろいろなスタイルを採り入れた曲を作るのはごく当然さ。エクセキューショナーズはヒップホップDJだからヒップホップしか作らないと思うのは間違いだぜ。一部のバトルDJみたいにヒップホップのレコードだけ聴いて、ビートをいじくり回してはクレイジーなことばかりやってる、ってのは嫌だね」(ロブ)。

「そう、それにチャレンジするっていうことが大切なんだ。同じことばかりやっていたくないしな」(トータル・エクリプス)。

 ナフ・リスペクト!!ってことでバリバリにクロスオーヴァーなキラー・トラックはこれでOKだろう。一方でストリクトリー・ヒップホップなヤツも当然用意されてますぜ! B・リアル(サイプレス・ヒル)にファット・ジョー、デッド・プレズ、そして何つってもゴーストフェイスとブラックソート(ルーツ)が参加した“Live From PJs”……タイトルからしてヤバし!

「オールド・スクール・ヒップホップのライヴ感覚が凄く出ている曲だね。ブロック・パーティーのスタイルみたいに公園でDJが回しているところにMCが入れ替わり立ち替わりライムするように、ヒップホップの要素をいろいろな角度から表現してるのさ」(レイダ)。

では最後に、アルバムを作り終えての率直な感想をロブに語ってもらおう。

「今回は、あらゆる実験や思いつくことはすべてやったし、かなりタイトなアルバムになったと思うよ。ギターもドラムもとにかくスクラッチしまくったしね。ただ俺たちのことを〈バトルで優勝したDJの集団〉って思ってる連中は、アルバム全体がスクラッチばかりだと思ってるかもしれないけど、俺たちはそれだけじゃなく、ちゃんと音楽をクリエイトしているぜ。ほんの一握りの人にしかわからないようなものを作りたいとは思わないしな」。

▼『Revolutions』に参加したアーティストの作品を一部紹介。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2004年06月17日 17:00

更新: 2004年06月17日 17:05

ソース: 『bounce』 254号(2004/5/25)

文/Masso 187um