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m-floの新作『ASTROMANTIC』を大解剖!!
m-floが語るm-floサウンド
まだ誰も聴いたことがない〈フレッシュ〉を求めて。m-floの新作『ASTROMANTIC』は、驚くべきゴージャスなコラボの数々と、ミクスチャーも際立ったサウンドの連続、また連続だ。では、その音作りの背景は? それを読み込むために、レコーディングに際して気になっていた音の傾向をm-floのふたりにいろいろと語ってもらった。
──次々と新しくなってくるクラブの音だけど、最近の音もいろいろチェックしてますか?
☆Taku(以下T)「たくさん聴いてますよ。でも最近は〈技〉でとことんやられたものはないかな」
VERBAL(以下V)「僕もヒップホップじゃなくて、違うジャンルを聴くことが多い。ドラムンベースとか」
──アーティストではどのあたり?
T「アルバム単位ではやっぱりロニ・サイズ。あとは4ヒーローとか昔のロンドン・エレクトリシティになるのかな」
V「いまのドラムンのタテノリ感は日本人の国民性と合ってる感じがするけど暗黒系はどうかな?」
T「DJマーキーの出現でシーンは明るくなったけどね」
DJ MARKY & XRS
『In Rota-tion』 Innerground(2004)
南風&木漏れ日系“LK”の大ヒットを受けた待望の初アルバム!! 詳しくはこちらを見てね!!
──ブラジル系のドラムンベースは☆Takuさんがパーティーでかける系の明るいヴァイブがイケる。
V「僕はヒップホップのビートをスピード・アップしたような単純なアイデアのものに共感するな。それこそクール・ハークがブレイクビーツを発見したときのようなね。EZローラーズとかは、いきなり速くなったり遅くなったりがいい。雑なストリート感が。ロニ・サイズのとこのMCも適当でしょ(笑)。それがかっこいい」
──MIC BANDITZではそういう粗削りなブレイクビーツにラップを乗せてますね。
E-Z ROLLERS
『Titles Of The Unexpected』 Moving Shadow(2003)
“Back To Love”などの歌もんベースが絶妙! ダグE・フレッシュも登場。
V「そういうヒップホップ以外でラップをのせるのはm-floでも前からやってるし何しろ楽しい。そういうラップ的にまだ開拓されてないところに自由を感じる。今回のm-floのレコーディングもキレイにまとめないで、初めてラップしたようなフレッシュさを心掛けたんです。録りも速かったな~」
T「2、3回録るんだけど、使うのは結局ファースト・テイクが多かったね。例えばブレスひとつにしても、コントロールしすぎないもののほうがドキドキするし」
──新作『ASTROMANTIC』はいろんな人とのコラボがとても新鮮ですよね。もともとどんな意図がありました?
T「難しく考えないようにしてましたよ。単純に〈あ、この人、こういう音を出してきた!〉って反応の繰り返し。かつ特殊効果満載で、さらに〈気持ち良く裏切る〉ってことがベース。VERBAL含め、みんな表現力が凄いでしょ? それに感化されるから曲自体もスピーディーになっちゃう」
──いまは外からの自然な刺激を求めてるんですかね?
T「求めてるね~」
V「アルバムを作ること自体が刺激を求める行為だったと言っても変じゃないよね」
T「それが理由でm-floが復活したって言ってもいい。で、やるんだったら究極のコラボレーション作にしたいって盛り上がった」
──普通じゃありえない組み合わせがホントおもしろい。
T「TAKAちゃん(DOUBLE)とTOKUさんとかね……」
DOUBLE
『Wonderful』 フォーライフ(2003)
しっかりと自分の世界のできてる人に違うことをやらせるおもしろさなんでしょうか。
──TOKUさんはジャズの人ですけど今回はジャズ的な曲も多いですね。
FRANK SINATRA
『My Way The Best Of Frank Sinatra』 Reprise
♪マァァ~イ・ウェェエ~など、最強の音楽マフィアが遺した名唱を集大成!!
T「今回のアルバムをやってからフランク・シナトラが好きになって。ビッグバンド風のものをずっと研究したいとは思ってたけど、これだけいろんな音楽を消化した後に聴けたってのがよかった」
V「そういえば、今回はジャジーなものが多い。身体が求めてたのかな」
T「TAKAちゃんにジャズ歌ってもらったら気持ちいいだろうなと勘で思ったから。それと、ジャズじゃない人がビッグバンドで歌ったもの……ティト・プエンテとインディアがやったアルバムとかがとても良かったというのもあって」
TITO PUENTE & INDIA
『Jazzin'』 Universal(2003)
新旧ニューヨリカン・スターの共演作。ゴージャスなラテン・ジャズって感じ?
──Bloodest Saxophoneとのコラボは、同じジャズでも男の粋って感じですよね。
Bloodest
『Saxophone Blood-est!』 Label(2003)
ルーディー&パンキッシュにジャズを鳴らすイカつい兄さんたち。もう血まみれ!!
V「リーゼントかっこいいしね」
T「管楽器を全部低い音で揃えているところに美学を感じるよね。彼らのライヴを観て、何かイマっぽい、カッコいいと思ったんだ」
V「ジャズだと、スウィングしてるピアノのものがすごく好き。アート・テイタムとかテディ・ウィルソンとかの古いジャズ。禁酒法があった時代とか。黒人の人はすごい辛い時期だったと思うけど、音楽からは、それを乗り越えて楽しくやろうよっていうのがすごく伝わってくるから」
──Crystal Kayさんとの“gET oN!”にあるムリヤリに明るいヴァイブってその話と一脈通じません?
Crystal Kay
『Motherland』 エピック(2004)
リリースされたばかりのニュー・シングルは包容力のあるバラード! アルバムもそろそろ。
T「全力投球ですよね(笑)。ハズしても全力投球したらつまんなくてもウケちゃうみたいな(笑)」
──彼女がラップやって、テレてるところがいいですね。あのテレをよく録ってくれました。曲のほうは、ブラジルですよね?
T「だと思う(笑)んだけど」
──☆Takuさんはブラジルとかラテン系のハウスも好きでしょ?
T「大好き。LTJエクスペリエンスとか。でもお洒落だったり燻し銀のものよりも、〈ワ~イ〉っていうのが好き。キャッチーなコード進行で♪ラララで歌えて。ビートはオーガニックなものよりエレドラでのほうが自分に合ってる」
LTJ X-PERIENCE
『When The Rain Begins To Fall』 Pヴァイン(2003)
伊イルマからもリリースのあるニュー・スクール・ボサノヴァ・ユニット。
──教授(坂本龍一)とのコラボは?
T「インターネットでセッションしたんですよ。プチプチしたノイズとかスーパーマーケットの音をNYから送ってくれたり。いや~、僕は中学、高校の時は教授の大ファンだったから……」
──教授との“I WANNA BE DOWN”のブッタ切り感、そのカット&チョップの楽しさって、UKガラージのそれにも通じますね。そして、CHEMISTRYとの曲もなかなか凄まじい。
坂本龍一
『CHASM』 ワーナー(2004)
MCスナイパーほかゲストの人選もナイスな最新作。貪欲に新境地を開拓する〈教授らしさ〉全開の一枚!!
T「トッド・エドワーズとかね。彼は相変わらず同じことばっかりやってるけど、カッコいいんだよね」
TODD EDWARDS
『Full On Volume 2』 I(2003)
トッド大将はまだまだソリッド! “Beckon Call”などに燃える人気シリーズ第2弾。
──一方で、Dragon Ashとの曲はかなりミクスチャー系ですよね。
T「なんてったって僕自身のミクスチャーのルーツはリヴィング・カラーだから」
V「僕は、ロックだとキュアーとかカルトとか。暗黒系が結構好きだったかな」
LIVING COLOUR
『Time's Up』 Columbia(1988)
〈ブラック・ロックの星〉として80年代後半に活躍したグループ。最近復活もしました。
──なにげにディープな話になりそうなんで、最後にm-floらしくBoAちゃんとのポップなコラボ曲で話をシメてください。
BoA
『LOVE & HONESTY』 avex trax(2004)
韓国出身の……なんて前置き不要のBoAちゃんとのコラボも定番化してますな。声のハリがエエのよ。
T「コアなものもメジャーなものも、同じようにおもしろいってことなんですよ。高校時代はフランキー・ナックルズをカッコいいなと思いつつ、ジャネットを同時に聴いて手を叩いてた……そういうことなんですよね」
FRANKIE KNUCKLES
『A New Reality』 Definity(2004)
いいタイミング(?)でソウルフルな新作をリリース!